2017年有馬記念回顧 あるいは黒岩の6秒

日刊競馬 カレンダー 壁掛 2018年版

前にも書いたとおり、おれはジャパンカップキタサンブラックが負け、有馬記念で勝つと予想していた。中長期的な予想だ。有馬記念キタサンブラックの頭から行く。それは決まっていた。

が、一つ気になる情報が飛び込んできた。最終追いきりのタイムが調教師の指示より6秒遅いというのだ。そして、キタサンブラックは木曜にも坂路入りした。調整ミス? もし、これで負けたら黒岩(レースでは武豊)のせいになるのではないのか。おれは黒岩(レースでは武豊)という騎手のことはほとんどしらない。しかし、黒岩の6秒が語り継がれるのは不幸のように思った。

馬券を買うのは馬体重発表、パドック映像まで待った。一応のことだ。キタサンブラックは文句ないように思えた。馬っ気を出しまくったり、高知競馬の10歳馬のように疲れていることもなく、普通だった。名馬は普通であればいい。

問題は、相手だった。おれは人気サイドに予算を叩き込むよりは、同じ予算から穴馬を買い散らかすタイプの人間だ。そこで、おれはステイゴールド産駒という理由からレインボーライン、同年の中山重賞勝ちという理由からシャケトラを重視することにした。三連単ボックスを買うことにしていたので、キタサンブラックレインボーライン、シャケトラ、そして人気のシュヴァルグランにスワーヴリチャード。これで五頭。自信ありだ。ここまでくると、どうせならシャケトラあたりが頭になってくれれば高配当、などと思えてくる。

あとの気になる馬は? キタサンブラックからの馬単で買う。まずは中山巧者のサクラアンプルール。個人的に好きな馬だし、期待もしているルージュバック。あとは……東スポ本紙と山川の一撃が本命を打っているクイーンズリング? いろいろ流した。マエケンがゲストで出てきたので10―8(タカモト派ではこれで「18」扱いするのです)などもおさえた。

おれは酒に酔っていた。ラガヴーリンの16年ものを飲んでいた。ただ、キタサンブラックが勝てばよいと、それが中長期的な見方であると思っていた。そして、たまには競馬には約束されたなにかがあると思っていた。ゲートが開いた。

キタサンブラックは逃げた。シャケトラが二番手をがっちりマークした。三番手以降はおれの三連単と関係ない馬が続いた。このままキタサンブラックとシャケトラでワンツー、そしてスリーに大魔神の馬、あるいはレインボーライン、もしくはダービーで最後まで本命を迷った(結局レイデオロ本命にした)スワーヴリチャードがくればいい。さあ来い!

「!」などと書いたが、レースは淡々とキタサンブラック、この日この一鞍のみの武豊が逃げた。逃げて、勝った。二着にはルメールクイーンズリングが入った。△や▲を集める馬より、だれかが渾身の◎を打った馬の方がこわい。おれがまだ若い頃、清水成駿がピルエットという馬に◎を打って当てたときからの習性である(この日のメーン、毎日王冠、おれのカネツクロスは惨敗した)。

4歳上500万下|1995年10月08日 | 競馬データベース - netkeiba.com

レース回顧映像を見たら、サクラアンプルールが直線で異常な後退をしているのが見えた。おれは酔っていたのでよくわからない。そのあたりのことは、あとからいろいろ読んで知った。知らなくてもよかった。とりあえず、おれは馬単を当てた。一番人気から八番人気。トリガミだとしても、まあ悪くはない。そして、おれの中長期的予想が当たったのもよかった。クイーンズリングに◎を打った東スポ本紙と山河の一撃にも感謝しよう。

そういうわけで、2017年の有馬記念は拍手喝采に包まれて終わった。JRAの芝G1勝利数最多タイ、歴代賞金王、あとはなんかあったっけ。ともかく、キタサンブラックが勝ってよかった。黒岩(レースは武豊)も救われた。名レースと言われるとどうかわからない。前日の中山大障害アップトゥデイトオジュウチョウサン打倒の捨て身の大逃げを打って、それをなんとか捉えたレースの方が名レースだったかもしれない。でも、そういうことは置いておこう。キタサンブラックが勝った。それでよかったじゃないか。おおよその人間がそれをみるために10万人競馬場に行ったんだ。たまにはそんなことがあってもいい。土日トータルでえらく踏んだり蹴られたりしたおれも、満足だった。しかし、阪神最終、日和ってサウススターマンから買ったのは悔やまれる。ブラゾンドゥリスと迷ったんだ。本当だぜ……。