先入観の上を行く、映画『帰ってきたヒトラー』

 

 もしも現代にヒトラーが蘇ったらという『帰ってきたヒトラー』。なにやら設定とタイトルから、いろいろ考えてしまい、だいたいそういうものだろうな、などと思ってしまいはしないだろうか。おれも「だいたいこういうものだろうな」と思ってしまった人間の一人である。ゆえに、原作も未読である。

が、しかし、この映画『帰ってきたヒトラー』は想像の上を行く……というと語弊があるかもしれないが、なんというか、うまくできている。さすがドイツ人、という偏見もよくないのかもしれないが、このテーマを映画化するにあたって、がっつり組み合っているという印象を受けた。

特徴的なのは380時間(分じゃないよ! でも使われたのは30分)をかけて撮った、セミ・ドキュメンタリーのシーンだろうか。ヒトラーの扮装をした主役が、一般市民や運動家などとアドリブで接して撮ったシーンだ。現代ドイツの群衆にヒトラーを投げ込むのだ。そして、なにかこう、移民を受け入れて混乱するドイツを嘆くやつもいる、収容所が必要だというやつもいる、いっぽうで、問答無用に中指を立てるやつもいる。その凄味がある。間違いなく、これはすごいドキュメンタリーのように思える。

その部分のみがすごいのか、というと、そうでもない。非常にかっちりした作りだ。どういう風に表現していいかわからないが、映画として成功している。監督も、とろサーモンのメガネかけてるやつみたいなのに、ガッツンガッツン役者と取っ組み合ってる。主役はあえて無名の役者を選んだらしいが、そこもうまく行っている。一方で、映画『ヒトラー 〜最期の12日間〜』をパロディするあたりも手堅い(あの有名なシーンですよ)。やはりドイツ、手堅い(という偏見もよくないのかもしれないが)。

つーわけで、本作は観るに十分値する映画だ。「たぶんこうなんでしょ」の「こう」はそれほど外れないかもしれないが、観ていて十二分に面白いのだ。そして、なにか考えようと思えば、考える土台にもなりうるのである。少なくとも、おれはそう思った。そしてまた、ドイツ人のヒトラーへの愛憎、といってはなんだけれども、なにか複雑な思いを少し垣間見れたような気がして、そこも興味深かったのである。以上。

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