これは普通のラーメン 映画『羊の木』

羊の木(Blu-ray豪華版)(Blu-ray+2DVD)

「この映画はおもしろいのではないか?」……という判断基準というものがある。そうでなくては、この世のすべての映画を見るか、一切見ないかのいずれかになってしまう。例外として、女が「これを見に行く」と言ったときがある。

さて、おれの中では「おもしろいのではないか?」という判断材料になる役者というものがある。『羊の木』においては次のようになる。北村一輝市川実日子田中泯松田龍平安藤玉恵……少なくない。これはいけてるんじゃないのか、と思った。そして、殺人犯の元服役囚を一つの市が受け容れる、という設定もよさそうだ。これはやっぱり、いけてるんじゃないのか、と。

結果としてどうだったか。うーん、わりと「普通のラーメン」だった。冒頭で、釈放された元服役囚の一人がラーメンとチャーハンをかっくらうシーンがあったが、そのくらい市井の味に飢えていたのであればおいしいだろう。だが、おれにとっては、まあ、「普通のラーメン」だった。700円くらい出して、それくらいの味とボリュームのラーメンが出てきたという、そういう感じだった。とりわけひどい、ということもなければ、これは再訪しよう、というほどでもなかった。

が、やはり先ほど羅列したおいしくなりそうな材料を眺めるに、なにか物足りなさというものは否めない。トッピングなどして1000円出して、650円くらいのラーメンだったな、もう来ない、という感じである。松田龍平あたりはいい味を出していたが、やはり全体として期待をこえてくれなかった。もっと、獣臭いラーメンにだって、マシマシのラーメンにだってなれたはずじゃないのか。もっと、弾ける設定じゃないのか。それがおれの感想である。チャーシューは美味しいが薄かった。そんなところだ。サービスセットの半チャーハンをメーンにして大盛りにしたらよかったんじゃないのか、というところだ。いったい、おれはなんの話をしているのか。

まあ、そんなところだ。ところで、これの原作は漫画で、その原作が山上たつひこ、漫画はいがらしみきお。これはなかなかにエグそうなダッグだ。おれは原作漫画をまったく読んだことがない。むしろ、そっちが気になった。そんな腹具合である。以上。