心安なる人生のために。
あるいはすべての死んだ馬のために。
- 朝目覚めたら、体を起こすまえに「一、二、三」と数えなさい。それを三度繰り返しなさい。
- できるだけ多くの草と木の名前を覚えなさい。
- 寝る前にミルクを飲んでも歯を磨きなさい。
- はじめて会う人に敵意を持たないようにしなさい。
- あらゆる人間は、自分を含め、信用に値しない。
- あなたのことを知っている人間を信じないようにしなさい。
- いくら疲れていても食事は最低一日に二度とりなさい。
- 町で犬の死骸を見なくなった。
- よいワインは美味であることを知っているということだけに満足しなさい。
- 身につける革は羊革だけにしなさい。
- 単純なリズムだけ信じること。
- 喉を痛めたら、トラネキサム酸が含まれた風邪薬を飲みなさい。
- あらゆるものが、あなたの魂と同じ大きさであることを自覚しなさい。
- 片方の靴の裏の減りだけが早いときは、片方の靴だけ売る靴屋がないということを思い出しなさい。
- 工夫よりカンフーが身を助ける。
- キョウチクトウが含むオレアンドリンには注意しなさい。
- 太陽に背を向けたとき、あなたは大勢の人に向かっていることを忘れないようにしなさい。
- 空気が重くなってきたら、身を横たえるようにしなさい。
- あらゆる画面と呼ばれるものの向こうには、犬しかいないと思いなさい。
- くたびれた財布のなかに幸運の小人は住んでいないと思いなさい。
- よい映画を観たあとは、たとえ一人であっても拍手しなさい。
- 三ヶ月に一度だけ、思い出したようにお菓子を買いなさい。
- 光るものはたいていよいものだ。
- 距離延長の逃げ馬は必ずヒモに加えなさい。
- 人生がいま終わってもいいように、後悔という後悔をいつでも取り出せるようにしておきなさい。
- 私は私の脳のなかにあり、脳は私のなかにある。
- 理不尽な喧嘩から逃げないように心を整えておきなさい。
- 電車は速ければ速いほどよい。
- お金より大切なものはないということを、あらゆる理念の上に置きなさい。
- 文章を上達させたければ、日本語ラップを聴きなさい。
- もし古着を買うのなら、もう存在しないブランドのものを買うようにしなさい。
- 犬には媚を売りなさい。
- 猫には無関心を装いなさい。
- 玉は相手玉が動くタイミングに合わせて動かしなさい。
- 重力は自分が決める。
- おのが欲望を見る欲望を見返して、欲望に従いなさい。
- 昼は機械人形の如くふるまいなさい。
- 男の肌のケアはニベアで十分だと心得なさい。
- 何度か聴いてようやく好きになる楽曲というものは存在しないと思いなさい。
- 手を洗い、タオルで水を拭き取るときにだけ、神というものについて思いを巡らせなさい。
- カラスのように生きること。
- いついかなるときでも、墓場の静寂をまといなさい。
- 遠見の角。
- 自転車のタイヤの空気は決まった日に、チューブの限度いっぱいに入れるようにしなさい。
- 笑ってしまったら、その時点で負かされたと思いなさい。
- 自転車のチェーンに油を差すときは、かならず先にオイルクリーナーでチェーンを清掃しなさい。
- 神仏の偶像を前に手を合わせるとき、なにも願い事が思い浮かばなかったら、「なにも願わない、ただ手を合わせる」と心の中でつぶやきなさい。
- 初めて何事かにあたるときには、もっとも極端とされるものを選びなさい。
- 走るときは、ただ薔薇のために走りなさい。
- これは日本語で書かれ、あなたは日本語で読み、日本語で考える。
- 群衆の中、たとえば混雑した駅のホームでハンガー反射を試すのはやめなさい。
- 身体が自分に属しているのか、自分が身体に属しているのか、指一本動かすそのときにすら意識するように。
- 夜空にキラキラ光るUFOを見たら、写真を撮って東スポに送りなさい。
- 顔文字はあまり使わないように。
- ゴキブリはキッチンハイターで殺しなさい。
- 目に見えるところに置いておけば、いかなるものも腐敗しない。
- 罵声を浴びせられたときに言い返す、必殺の一言を言葉のフォルダの一番上に来るようにソートしておきなさい。
- 生きるものを殺したときは、「南無三宝」と意味もなくつぶやきなさい。
- 突撃銃を選ぶ場面では、まずAK-47を探すこと。
- ささやくものには耳を塞ぎ、大声でどなるものには殴打で立ち向かいなさい。
- メイショウの馬は人気薄でもよく二着に来ると覚えておきなさい。
- 本当に二度と会えない人とは別れるまえに握手をしなさい。
- 好きなものから食べなさい。
- 東スポはインテリが書いている。
- 明日できることは、明日やるべきことと承知しなさい。
- 声を出して泣くのは人前で、涙をこぼすだけなら一人のときにしなさい。
- 「草原」と思えるところに足を踏み入れたら、下手くそでもいいから口笛を吹きなさい。
- 眠れないときは、たとえ乗ったことがなくとも寝台列車のなかにいると思いなさい。
- 労働はしないに限る。
- かつて美少年であったことがないと思う男は、信用しないようにしなさい。
- 嘘を書くときはポイントを五割増しに大きく、本当のことを書くときは書かずにしまっておきなさい。
- 多くの人がいいと言うものにはどこかしら美点があると思うように、ただし、それに当てはまらないものがある。
- 当たるから宝くじを買うのだ。
- 当たるから馬券を買うのだ。
- 人生における恥とは、生まれてしまったことでその大半を使い切ってしまったと思い返せるようにしなさい。
- 右か左か迷うようであれば、来た道を戻りなさい。
- 惣菜パンのカロリーの高さを知りつつ、それを食べられる運動を欠かさないようにしなさい。
- 香りは記憶をもたらすが、悪い思い出はもたらさない。
- ほんの少しよいことがあったときだけ、シングルモルトウイスキーをちょびっと飲みなさい。
- 形は盗まず、色合いだけ盗みなさい。
- ハンカチを忘れたら、ハンカチを買いなさい。
- 内容を忘れてしまっても、ページの右か左か、はじめか終わりか、どこに書かれていたか覚えていれば十分だと思いなさい。
- 脳内に浮かんでくるすばらしい映像は、決して他人と共有できる形にしようなどと思わないようにしなさい。
- 原付のスピード感くらいは知っておくこと。
- 晴天の日に傘を携えていても、堂々と道を歩きなさい。
- 重要なパスワードは付箋に書いてパソコンの前面に貼っておくようにしなさい。
- 半年に一度は海を見なさい。
- 意味もなく「鶏肋、鶏肋」と一人つぶやいてみる。
- 統計を疑うように、機序もまた疑いなさい。
- 花の名を聞かれたら、嘘でもいいから「ムラサキソシンカだね」と言う。
- 常に誤った時代に生まれてきた。
- 一番の馬鹿が一番かしこいということもなく、一番かしこいものが一番馬鹿であるということもなく、たいていの人間が薄らぼんやりした馬鹿であると思いなさい。
- 最初に火傷をするのは火をつけた人間その人でなく、偶然そこにいた間抜けなやつであることを忘れないようにしなさい。
- 作る時間より、食べる時間が長くなってはいけないと意識しなさい。
- 散歩に行こうと思った瞬間から、散歩ではなくなっている。
- 電子の音は原始の音であり、私たちの帰るべき場所だと知りなさい。
- 勇気は暴力そのものであると知りなさい。
- ロバのように脚の遅い競走馬は、ロバのように脚の遅い競走馬にすぎないと知りなさい。
- 人生の知恵というのは、適度な時間でパスタを茹であげる技能にすぎない。
- フジバカマとアサギマダラの共犯関係に気づいても、見て見ぬふりをする。
- 一番の空虚な時間の過ごし方は観光であると、観光の計画を練っているときに思い返しなさい。
- アルコール度数は酒の回り方に比例しないと覚えておきなさい。
- 罪などなく、ただ罰があるだけ。
- 夜寝るときは、「三、二、一」と数えなさい。それを三度繰り返しなさい。