平成最後の日本シリーズ、広島東洋カープの戦いは終わった。日本シリーズまでやってくれた。ほかの十球団のファンに味わえないものを楽しませてくれた。そのことについては感謝の心しかない。
が、カープは負けた。日本一になれなかった。最後に日本一になったとき、おれはまだ物心がついていなかった。おれのなかの年表では、物心がつく一年前が最後の日本一なのだ。
おれは物心がつく前からのカープファンである。それがたとえ父親に誘導されたものであっても。
そして、おれの人生の終わりも見えてきた今年、カープは日本一になれなかったのである。
……なぜか? ある人は緒方孝市監督の采配にあるというだろう。また、ある人は主力選手の不調が原因だと言うだろう。
それもある。それもあるだろうが、おれはここで血を吐きながら言いたい。
「カープは戦力が足りなかった」
これである。
あまり言いたい言葉ではない。だが、これを痛感した。ソフトバンクは主力野手を欠き、主力リリーフを欠き、それでもなおカープより上の野球をしてみせた。カープがやりたかった方法で得点し、カープがやりたかった方法で守った。
これも言いたくないが、レベルが違った。さらに言えば、リーグのレベルが違ったのだ。これを痛感した。
カープは、リーグを戦った戦力の、ほぼ万全を出せたといっていい。もちろん、丸佳浩の調子が上がらなかった、というようなことはある。薮田和樹はどこに行ったのだ、という話もある。だが、シーズンを戦い抜いた面子的には揃えて出せた。鈴木誠也を欠いた、という去年のポストシーズンのようなことはなかった。
なのに、この結果である。むろん、緒方監督が短期決戦向きに最適の采配をしたかどうか、というところはある。あるが、あったとして、それは一敗分くらいだろいうというのがおれの見方である。数字の根拠は出せないが、だいたいそのくらいのものだろうと思う。監督が常に正解したところで、まだ二勝足らない。そう感じた。
具体的に、どのポジションが足らなかったのか。やはり、投手陣だろうか。先発がもたない、頭数が足りない、それがきつかった。いや、それでもヘロニモ・フランスアがあと二人いたらどうだったろうか? 兎にも角にも、とりあえず投手が足りなかった。そう思わないか。
総合的に、負けたのだ。甲斐キャノンひとつに負けたわけではない。ミスに乗じての得点、一発のソロホームランの重み、ここぞで抑える投手、いろいろな面で負けた。総合するに、それは個々の選手の能力であり、やはり戦力ということになる。
これは、カープファンとしては本当に言いたくないことなのだ。しかし、この日本シリーズの結果を前にして、「選手の努力が足りなかった」、「監督の采配が悪かった」だけでは済まされない、そう思ったのだ。
補強が必要だ。
しかし、これはやはりカープファンとして言いたくない言葉なのだ。言っちゃ悪いが、おれの嫌いな読売の物言いではないか。あるいは、おれはソフトバンクだって嫌いだ。金のあるやつはだいたい敵だ。
しかし、大金をはたいて能力のある選手を揃え、その上努力して、チームワークを高め、采配が決まって、それでようやく日本一になれるのだ。もちろん、勝負の運というものが働いて、なんらかの下剋上が起こることはあるかもしれない。それでも、運頼みでは勝てるものも勝てない。痛感した。
これはきつい事実だ。カープはセ・リーグを三連覇したチームである。セ・リーグ相手には、現状でも王者であり得る。が、日本一という一段高いところを目指すには、それでも足りない。
それに、今年について言えば、他球団が勝手に自滅してくれたところがある。弱い方のリーグの、他球団のアシストあっての優勝。いや、優勝自体の価値は価値だが、日本シリーズでの結果はそんなものを吹き飛ばすものであった。日本一の王者というものがどのようなものであるか、見せつけられてしまった。
では、カープは今後どうするべきなのか?
これは見えない。暗黒時代に比べて資金的な余裕はあるだろうが、読売やソフトバンクと札束の叩きあいをして勝てるわけではない。かといって、地道に選手を育て、あるいはドミニカから呼び寄せ、それだけでいいのか。それでセ・リーグは勝てた。だが、それ以上を目指すならば……。
おれは悲観主義者である。四連覇の可能性がないかといえば、ノーだ。四連覇はありえる。謙虚に言っても、向こう五年、いや、三年くらいはCS進出できるとは思う。思うが、リーグを勝ち抜いて、なおかつ日本シリーズまで勝ち抜けるかといえば、やはりあやしいと思う。ましてや、FAで主力選手が抜けていったら、その穴をすぐに埋められるのかというと簡単な問題ではない。そして、カープを強くした、石井琢朗、河田雄祐コーチの影響も薄くなっていくことだろう。
もちろん、なにかの偶然が重なって、日本一になれる可能性は否定しない。たとえリーグ最下位のチームとリーグ優勝のチームであっても、四勝先取の短期決戦ではなにが起こるかわからない。が、なにが起こるかわからない、では済まされない。それが、今現在のカープの居場所である。
むろん、贅沢な悩み、物言いであると批判されることは承知の上である。だが、最下位争いを長く続けていたカープが、ここに来て、さらに大きな壁があることを痛感している。その現実を見せつけられた日本シリーズだった。では、どうすればいいのだろう? おれにはその答えも見つけられない。
酒をあおって、寝る。