【ブログ収支報告】9400記事書いてコロナ・エキストラもらいました!

f:id:goldhead:20190626120624j:plain

あれは20年くらい前のことだったろうか。はてなダイアリーの企画で「4200日以内に9400記事アップしたらコロナ・エキストラ12本プレゼント」という企画があった。まだ新大陸と同じくらい若く、ネットの世界を前に腕を撫していたおれは「同じ値段でステーキを!」と思い、さっそく申し込んだ。

それからが地獄であった。当時のブログというものは、基本的に手書きであった。おれは原稿用紙を必死に埋めて、京都の山奥にあったはてな社に速達を送り続りつづけた。そして、真っ赤になった原稿用紙が返ってくる。一つのエントリーで3往復、4往復は当たり前のことだった。大雪などで飛脚が荷受けを拒否したときなどは、北前船に乗って敦賀の港まで行ったものだった。そのときは海も大時化で、同乗していた坊主がおかしくなって、なにやら念仏を唱えながら仏像と一緒に海に飛び込んだりもしたものだった。

やがて、インターネットの技術も進み、原稿もファクシミリで送ることができるようになった。これによって、更新の速度も26.8%もアップした。おれは自宅があるニューヨーク州のオスウェゴから必死にブログ記事を送り続けた。それでもまだ、個人がインターネットを使うのが難しい時代のことで、自分の記事がどのようにアップされているのか、おれには見ることができなかった。だいたいまだ、アメリカ一般家庭へのラジオの普及率が7割くらいのころだった。

おれは思った。もう、9400記事書いたのではないか? と。おれは確認の電報を打った。だが、その電報は宛先人不明で戻ってきてしまった。そのころ、ゴールデンラッシュ目的ででアメリカを訪れたばかりの邦人に聞いたら、なんでもはてな社もアメリカに来ているとのことだった。

はてなの連中につるはしでも売るつもりなのかい?」

こうもしていられぬと、おれはフォードのピックアップトラックを駆って、シリコンバレーという場所に向かった。アメリカはまだ若く、荒野はどこまでも広がり、ただただハイウェイばかりが真っ直ぐに伸びていた。交通事故を起こした挙げ句、コヨーテに食われている死体を何体も見た。

やがて見えてきたガーンズバック連続体。あれがシリコンバレーか。そう思って都市に入り、はてな社を探した。が、一向に見つからない。くたびれたおれは酒場に入ってミルクを一杯注文した。

はてなという会社を探しているのだが……」。

「あんた、よそ者だな。あの会社は、ジャパンに帰っちまったよ……。ところで、ジャパンってのはメイソン=ディクソン線の北と南、どっちにあるんだ?」

そしておれは再び日本の地に降り立った。見違えるほど変わってしまった日本に。空港で、検査官に「日本の総理大臣は?」と聞かれたので「中曽根康弘」と答えたら、怪しいやつだということで別室に連れて行かれ、尻の穴まで覗かれたっけな。

ようやく、インターネットも一般家庭に普及するようになっていた。おれは日が昇っているうちはカーテンを締め切った部屋で眠り、日が落ちてしばらくすると、カーテンを締め切った部屋でテレホーダイに接続した。せっせと、せっせとエントリーを送りつづけた。そして、おれははじめて自分のブログを見た。<MARQUEE>タグと<BLINK >タグに彩られたおれのブログは、関内関外日記という名前で「WELCONE」というでっかい文字がピカピカ光っていた。新聞配達のブロガチャが聞こえると、おれは寝床に潜り込んだ。

おれは生活も記憶も失った。おれは覚えていない。おれが何日ブログを書き、何件のエントリーをアップしたのか。おれはもう頭がおかしくなってしまったのかもしれない。そんな幽玄の世界を生きていたら、Amazonからコロナ・エキストラが届いた。おれの目標は達成されたのだと知った。おれは目が覚めて、すべてのことが了解された。おれは12年と218日ぶりに外に出た。コロナ飲むためには、ライムが必要なんだろう?

 

f:id:goldhead:20160419124042p:plain

 

ビール コロナ・エキストラ ボトル 355ml×24本

ビール コロナ・エキストラ ボトル 355ml×24本