この夏からはじまった『彼方のアストラ』。おれは原作もなにも知らないので、まったくの白紙で見始めたのだが、これが面白い。密室的宇宙漂流ものというジャンルがあるかどうかわからないが、面白くなる条件を備えている。備えているぶん、ハードルは高くなるのだが、現時点で第三話まで見ていいバランスだと思った。ハードSFに徹してもいいシチュエーションだが、やはりキャラが立っているのに越したことはない。その意味で、いつまでたっても諍いが収まらずリーダーが決まらないとか、かといってあっさり決まりすぎてもつまらないとか、そのあたりのスピード調整のバランス感がいい。各キャラについてもやがて掘り下げられていくのだろうが、いろいろありそうで楽しみだ。
……と褒めておいて落とすのもなんだけど、一個だけ疑問があるんだよ。それは、「アストラ号」をなんでもっと調べないんだよ? ということだ。五千光年飛ばされて、たまたまそこにあった宇宙船。やけにあっさり乗りこなすということは、地球人のフォーマットに則った船なのだろう。地球の言葉すら書いてある。メガネの人が自分データをモニタに表示させていることから、インターフェースも彼らと同時代的なものだろう。それはいいんだ。それはいいにしたって、なんで「アストラ号」探索をしないのだ。なぜ無人なのか。備蓄食料はないのか。人の痕跡はないのか。また、船のシステムが生きているなら、そこに至るまでの航路の記録など残っていないのか。気になることがたくさんあるじゃないか。むしろ、「アストラ号」探索で一話使ってもいいくらいじゃないか。それが漂流ものの見せ場の一つじゃないのか、とすら思うのだが。
だが、しかし、だ。そうなった理由があるかもしれない。「話のスピード感出すためにカット」、「原作ではあったけどアニメは尺の都合でカット」とかいう現実的な理由を除けば……。
たとえば、主人公一行は地球人類を観察する目的で地球外知的生命体によってこのような状況に置かれている。そのために、あのジャンプをするときに脳内をいじられて、船に対して興味を持たないように操作されている、とか。
あるいは、もともと彼らは「アストラ号」オリジナルの乗組員だったが、タイムリープだか多元宇宙だかで、何度も何度も同じ条件でやり直しをしており、本人たちが無意識のところで「アストラ号」は自明のものになっている、とか。
それとも、主人公はキャンプで遭難したあとに重い精神的外傷を負っており、その治療のために模造記憶を埋め込まれて、脳と直結されたシミュレーターの中で心的外傷を乗り越えるためのプログラムをこなしている。すなわち、他の登場人物も惑星キャンプも遭難もすべてがシミュレーションに過ぎない。そのような状況下にあって、船に関心が向かないようにプログラミングされている、とか。
あ、おれ、最後のがいいな。P.K.ディックっぽい。でも、違うだろうな。というか、わりとボケっとアニメ見るタイプだから、「探索シーンあったじゃん!」という、おれのほうが模造記憶の中にいたという可能性もある。まあしかし、次回も楽しみにしよう。原作は読まない。
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