山本弘『プラスチックの恋人』を読む

 

プラスチックの恋人 (早川書房)

プラスチックの恋人 (早川書房)

 

仮想現実“Virtual Reality”と人工意識“Artificial Consciousness”が実現したセックス用アンドロイド―オルタマシン。その中でも少年や少女の姿形をした未成年型オルタマシンの使用は、日本国内で賛否を問う激論を巻き起した。フリーライターの長谷部美里は、社会問題となりつつあるマイナー・オルタ利用の実態を取材するため、美しい12歳の少年の姿形をしたオルタマシン、ミーフと出逢う…。ヒトは、ヒトならざるものと愛し合うことができるのか。SF最大の禁忌を描く著者渾身の問題作。

『プロジェクトぴあの』に続いて山本弘作品を読んだ。本書では『プロジェクトぴあの』と共通した世界が描かれており、結城ぴあのや『プロジェクトぴあの』自体への言及もけっこうあり、たった二作品だけれど「おれこの世界知ってるー」感があった。

で、内容はというと、上の紹介文にあるとおりである。これがSF最大の禁忌かどうかはわからないが、なかなか語るのが難しい領域であることは確かである。というか、最近でも、この現実において、少年や少女の形をした人形についての議論があったりしなかったっけ?

というか、この作品では、SFという設定において、今この時代にもある問題を論じているように思えた。ある種の思考実験というか、このごろのリアルの議論を移し替えたというか。

なので、SF感は薄いといっていい。むしろ、あまりに今現在に引っ張られているというか、引っ張っているというか、そういう感じになっている。あくまで地続きというか、そういう話だ。たぶん、作者はそういう話をしたかったのだろうと思う。SFを求める人には不満足だろうけど、この「禁忌」について考えたいという人にはなにか得られるものがあるかもしれない。

と、おれがちょっと冷めているのはなぜかといえば、どうしても『天冥の標』を思い浮かべてしまうからだ。軌道娼界「ハニカム」、そしてラヴァーズ。「IV 機械じかけの子息たち」だ。もちろん、大長編の中の一編と比べるのはなんなんだけれど、『天冥の標』のほうがSFしているのだ。あらためていうが、前後の長さと重みあってのことだ。だが、やっぱり比べてしまうよな、と。そしてあらためて、『天冥の標』はあらゆるSFの要素を、たとえば『プラスチックの恋人』の主題みたいなものもぶち込まれてんだな、と思った次第。

あ、なんか話が『天冥の標』に逸れた。そんでもまあ、未成年型の部分、あるいは人形趣味(あれ、おれ少年人形好きだよな)のある人にはじゅうぶん楽しめると思います。ええ。そんなところ。

 

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《天冥の標》合本版

《天冥の標》合本版

 

 

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