おれにはなかった「あの頃」 映画『あの頃。』を見る

 

映画『あの頃。』。

松坂桃李主演×今泉力哉監督 で贈る、ハロー!プロジェクトにすべてを捧げた男たちの笑いと涙の青春叙事詩
2000年代初頭。モーニング娘。を愛してやまない“モーヲタ”たちが放った熱量をリアルに描いた劔樹人の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」を映画化。

おれは、その頃、どうしていたのだろうか。20年くらい前。実家が破綻して一家離散、金もなにもなかったころだ。

だから、おれは「モーニング娘。」をよく知らない……とは言えない。もとからアイドルというものにほとんど興味を持っていなかった。世間一般として松浦亜弥の名前も知っていたし、初期のモーニング娘。の名前もいくらかは知っていたかもしれない。でも、そのていどである。

一方で、この映画の主人公たちは「ヲタ」となってど真ん中に飛び込んでいった。アイドルオタクの同好会? サークル? で、イベントをしたりする。そのあたりの空気、文化、おれは全く知らない。

全く知らないけれど、この映画を見て、「そういうものもあったのか」と思える。じっさい、かなりディテールにこだわっているという。説得力がある。まあ、自伝的エッセイ漫画が原作だというし。

とはいえ、中高一貫の男子校で育ったおれには、このような男のホモソーシャル的なノリを知っているかいないかでいえば、あるていどわかるような気はするのである。もちろん、おれはこのような一生の仲間のようなものを作ることができない体質だったので、今、当時の人間で連絡を取れる人間は一人もいない。ついでにいえば、小学校時代、中退した大学時代についても同じである。

で、そのようなノリを見事に松坂桃李、仲野太賀らのメンバーが見事に演じきってくれている。配役が見事だし、演技も見事だと思う。

とはいえ、話はややダレた。モラトリアムからの卒業、というには卒業していなくて、それはそれでいいのだけれど、もっとざっくりにならんかな、という感じはある。具体的にどこを削ってどこを繋げろとは指摘できないけれど。

いずれにせよ、なんというのか、ヲタというものをそうとうにフラットに、客観的に絵描いたのではないかと、当事者でないおれには思えた。その中で、人生における「なにかを好きになること」を描き、しょうもない仲間づきあいが描かれている。アイドルにはまった人にはまた別の感想もあるだろうし、それはそれで面白い映画体験になるのではないだろうか。そんなところ。

 

原作↓