昼休み100円ローソン行って、店の外の傘立てに傘ぶっさして、買い物して出てみたら、傘がなくなっていた。傘が盗まれた! ビニール傘なんかじゃない、柄入りのちょっといい傘だ。右を見ても左を見ても、おれの傘を持っているやつはもういなかった。
ちくしょう、ちくしょう、ぶっ殺してやる!
……とは思わなかった。なぜなら、その傘はいわば予備役の傘であって、会社に置き傘にしていたものだからだ。傘を閉じたときにとめるマジックテープ部分が弱くなっていて、新しいものに買い替えたからだ。今朝も家からは新しい現役傘で来た。だが、昼休み、コンビニに行くときは念のために予備傘を持って出たのである。これはいつもの習慣で、傘泥棒どころか普通の泥棒もうろうろしているであろう、寿町地区に生きる人間の知恵である。
というわけで、心のなかでこうなってしまった。
傘を盗まれた怒り≒予備の傘を使ったおれ自身の賢さを褒め称える気持ち
でもな、予備でも盗まれたんだから、そりゃ窃盗だし、ビニール袋に入れるのを面倒くさがって店内に持ち込まなかったおれはマヌケだ。その上、会社まで濡れて帰るはめになった。しかし、なにか上の変な式によって、怒りが沸き立つことがないのである。もちろん、やはりむかつくことはむかつく。けれど、なにかやり場のない思いがもやもやと心に残ってしまった。どうしたらいいんだ、この気持ち。まあ、どうでもいいか。ちなみに、予備の予備の傘と、予備の予備の予備の傘もある。どんだけ傘立てがスカスカなんだ、うちの会社。