日本橋高島屋『柚木沙弥郎と仲間たち』展に行くのこと

日本橋高島屋。

『柚木沙弥郎と仲間たち』展に行った。

柚木沙弥郎と仲間たち|高島屋

柚木沙弥郎。ゆのきさみろう、と読む。

https://www.samiro.net/index1.html

柚木沙弥郎 - Wikipedia

 

「柚木沙弥郎展行きませんか?」と女の人に言われて、「誰?」となって調べて知った。女子美術大学で教え、学長にまでなっていたので、女の人はその線で知っていたのかと思ったら、そうでもなかった。「染色とかは別棟だった」とのこと。

 

そして、予定がいろいろあって午後四時頃、日本橋高島屋にたどり着いた。たどり着いた、というほどでもない。横浜の民が東京に出るとなるとすこし面倒なような気もするが、東海道線を使えばあっという間という感じもする。ひさしぶりの東京。というか、電車に乗るのも久しぶり。意外に電車内マスク率が低いなと思った。九月も半ばを過ぎたのに暑すぎるし。

 



柚木沙弥郎。民藝、あるいは工芸というもの。そのあたりについて、おれはよくしらない。よくしらないが、柚木沙弥郎の記事などを読んでいて、柳宗悦の次の言葉が出てきた。

美術は理想に迫れば迫るほど美しく、工芸は現実に交われば交わるほど美しい。

理想とはなにか。現実とはなにか。美しいとはなにか。おれにはわかりゃしません。けど、興味がないわけじゃない。なにせ美学・美術史学中退だからだ。でもやっぱりおれ、哲学がわからんので、勉強してもわからなかったろうな。

 

というわけで、この展覧会を見ていても、わからんことばかりだ。柚木沙弥郎の展示品についてはタイトルが「型染幾何文布」か「注染幾何文布」ばかりなので、どれがどうともいえないが、パターンを見ているとそこに面白みがあるのは確かだ。機械工芸品とは違って、パターンのなかに微妙なむらやにじみがあるのも面白い。色と形、形と色。柚木沙弥郎自身、半分は自分のものだが、もう半分はどう使われるかにある、ようなことを語っている。実際に仕立てられたワンピースも展示されていた。なるほど。

 

が、やはり一般人にわかりやすいのは《型染二曲屏風「犬猫」》、あるいは《型染飾布「メキシコ人物」》、《型染布「喜びの鳥」》ということになるだろう。これらのおもしろさは特別なものがあって、非常に「かわいい」といってもよい。

 

そこに自分が感じるのは、あるいは作家性、というか、アーティストの「我」のようなものかもしれないとも思う。パターンと「絵のようなもの」にそのような差を見出してよいかはわからない。

 

わからないが、一方である種の真理に近づこうとしているところがあるから、工芸も生きてくるのかもしれない。その逆もしかり……かも。

 

そのあたりがよく出ているのが柚木沙弥郎の絵本ということになるだろうか。

 

 

 

 

 

どれもすばらしい絵本だと思った(すみません、グッズ売り場で立ち読みしちゃいました)。どこか、この間みたマティスの切り絵のようでもあって、色合いと形に楽しみがある。

 

「仲間たち」にも触れておこう。女の人と「この間の古代メキシコ展みたいだよね」となんども言った。

goldhead.hatenablog.com

 

芸術の形は似てこないのかもしれないが、工芸の形は世界で似るのかもしれない。これも想像に過ぎない。しかし、今回の展覧会の船木研兒の作品を国立民族学博物館に「アフリカ」、「中国」、「メキシコ」その他いろいろのラベルを貼って置いておいても、「これ、違うよね」と言い切れるのは玄人だけじゃないか、などと思った。

 

あと、おれが全作品含めて、なんかいいな、と思ったのは小島悳次郎の着物だったのだけれど、記憶違いがあったかもしれないので、まあ、なんか最後のほうの段違い模様の着物だったと書いておく。

 

して、ここは美術館ではない。美術館にもグッズ販売はあるが、今回はそれ以上だ。百貨店である。同じ階で、全国各地の民藝品が売られているのだ。なんとなく民藝気分になっているところに、食器だのなんだのが並んでいる。もちろん、なんかいい感じのやつだ。ひとつ、買ってみるか、という気分になるのも仕方ないだろう。もちろん、高いものは数万円とかするが、二千円くらいで買えるものもある。しかし、「あ、これいいな」という茶碗などあっても、おれは炊いた飯を食う習慣がないので無用の長物である。現実に交わらない。

 

というわけで、「酒を飲むためのもの」を探すことになる。お、このおちょこはいいな。でも、おれは日本酒飲みじゃないし、ロックアイスとウイスキー、焼酎が入るくらいのサイズがいいな。でも、これじゃあ大きすぎて多量飲酒が増してしまうな。あ、この柄でいいサイズのがあればいいのに……などと、なにか展覧会よりじっくり見てしまったかもしれない。一度は「まあ、今日はいいです」となったが、しかし、やはり、日本橋高島屋に来ることは二度とないだろうし、せっかくなので、一つ買ってみた。

 

 

柳宗悦が「昔の窯場がどんな様子であったかを思いみる人は、現にあるこの小鹿田の窯を訪ねるに如くはないと思います」と書いたという、大分県日田市の小鹿田焼(おんたやき)である。この模様がもっと一面に刻まれていたやつもあって、そっちのほうがいい感じだと思ったがサイズが合わなかった。でも、これはこれでやはりいい感じのような気もする。

 

その後、東京駅の方へ。今、女の人は歯の矯正をしていて物理的に食べられないものが多い。「麺類でもラーメンなら食べられる」というので東京駅のラーメンストリートに行ってみたが、外国人観光客も含めて非常に混んでいたので、手前にあったビアホールみたいなところに入る。食べられそうなあんかけ焼きそばがメニューにあったので。

 

 

そして、おれは、ビールを800ml飲んで、ザウアークラウトとフライ盛り合わせなど食った。東京駅は意外に近い。近いからといって、用事もなく行くことはないのだが。

 

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deandeluca-enjoy.com

灯台下暗し? で、みなとみらいのコレットマーレのカフェに柚木沙弥郎の切り絵があることを知った。今度見に行く。