セブンのジェネリックで二郎の階段登る

月曜日。朝から二日酔い……ならまだいい。前夜というか、午前三時過ぎまで焼酎を飲み続けていたので、酒が抜けていない、というのが正確なところだった。不思議なことに、これが朝どころか昼間、夕方とつづいたのだから少々薄気味悪い。脳内で快楽物質を放出する能力ならまだしも、体内で酒を作りつづける能力というのは……酒代は浮くにしても。

仕事は忙しかった。忙しく、そしてあまりやりたくない仕事だった。とはいえ、おれのする仕事というのは非常に範囲が狭いので、普通の人から見たら本当になんの違いがあるのか、というくらいのものである。だが、ダルビッシュ有の変化球が微妙に異なる軌道を描くように、おれにとって没入できる仕事と、散漫になる仕事があって、今日は後者が多かった、ということだ。しかも酒が抜けていない気分。

そんなんで、夜、遅くなってしまった。今日はスーパーで買い物する予定だったが、このままではキムチ鍋が作れない。作れないこともないけど、陣容に不満がある。おれにもこだわりがある。永川勝浩はストライクを取りに行くフォークと、空振りを取りに行くフォークを投げ分けていた。そういうものだ。

「たまにはコンビニ弁当でもいいか」。

おれはそう思った。おれの昼食の調達はコンビニに頼っているが、買うのはだいたい「サラダという名のキャベツの千切り」、「わずかな鶏肉のなにか」くらいであって(あとはお恵みいただいた春雨スープ)、「コンビニ弁当」をガツンと食ってないな、しばらく食ってないな、という気になったのである。「コンビニ弁当」をガツンと食うというのはおれにもよくわからないが。

というわけで、帰り道、コンビニへ。「やっぱり袋入りのサラダとサラダチキンにしようかな?」と思ったおれの目に飛び込んできたのは、大量の……これだった。

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セブン-イレブンジェネリック二郎、とか呼ばれているやつだ。「店長、ネットでの評判を過大評価したんじゃ」というくらいぎっしりと並んでいた。だいたい、ちょっと前という気もするし。で、その横には赤い色のスタミナニンニクラーメンとかいうのも並んでいた。弁当はというと、あまり選択肢がない。……どうせなら、いっておくか。

おれとラーメン二郎ラーメン二郎とおれ。その関係は次の文章で表現される。

日記らしい日記090912 - 関内関外日記

華隆餐館が有る限り、目の前のラーメン二郎 関内店に入ることは出来ない。

 ……って、人様の言葉じゃないか。まあいい。おれは土日の図書館行きで、ラーメン二郎関内店の行列を横目に見ながら、そこに並ぶことができないまま歳を重ねてきた。上の日記からしてもう十年近い。十年にわたって、「死ぬまでに一度くらいラーメン二郎というものを食べてみようか」と思いつづけながら、行く勇気が出ず、ついつい「ゆで太郎」に入ってしまうのである。おれは冒険を好まない。

と、言いつつも、「いわゆる二郎インスパイアな店なら行けるのではないか」などと伊勢佐木町近くの店の情報を集めたりもしていたのだが……、コンビニで買えるなら、まずそれだな。そう思った。むしろ、「もう、それでいいかもしれないな」と思った。おれは少し重いラーメンをカウンターに持っていった。「温めますか?」、「いや、いいです」。自転車のかごに熱いラーメンをこぼしたらどうするのだ(こぼれないように容器が設計されているのだろうけれど)。

して、持ち帰って着替えて、さあ温めるか。と、500wで七分二十秒。ああ、そんな話だっけな、と思う。おれの電子レンジは500wと600wを選べるようにできていて、初めて500wを指定した。めったに食わないものを食うのに、加熱時間をしくじったらもったいないだろう。

七分二十秒は、わりと長い。

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蓋を開けてまず感じたのは、モヤシのにおいだった。「あれ、わりと野菜入ってるから、健康にいいのでは?」などと思う。が、野菜を少しかき分けて麺を持ち上げてみると、なにこの太さ。うどん? みたいに思う。そして、味は少し濃い。……けどね、おれはあまりあっさりした昔ながらの普通のラーメンと言われるようなラーメンを実のところあまり好いてはおらず、横浜市民だから言うわけじゃないが、家系くらいのこってりさはほしいのだ。その点で、おれは「普通のラーメンよりはこっちだな」と思った。

そして、おれは食った。

うーむ、こういうものか。

これがもっと、リアルなのが、ライブなのが、そして量が多いのが、二郎なのだろうか。

とすると……、ちょっと胃がしんどい。というか、炭水化物を最小限に抑えたダイエットというか、食習慣をしているおれに、コンビニのこれですら少しきつい(朝からずっと酒が抜けてないという体調はあるにせよ)。

これでは、とてもじゃないが、関内二郎に行くことなどかなわないのではないか。「ゆで太郎」ではなく、日の出町の「伝説のすた丼屋」に毎回行くくらい胃を鍛える必要があるんじゃないのか、そんなふうに思うた。

とはいえ、おれは中年として弱っていくのだ。今のおれが一番若い。行くなら今か? いや、そうまでして行きたいか? どうせ並ぶなら「地球の中華そば」の方がいいんじゃないのか。それとも、その横の「勝鬨家」に行ってみるのが先ではないか……。つーか、そもそも炭水化物は……。悩みは尽きぬ。太田胃散を飲んで、寝る。

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