令和六年 年頭所感

 

おれがいままで迎えてきた新年と、おれがこれから迎える新年。

おれがこれから迎える新年のほうが少なくなった。

おれはそのような年齢になった。

おれはそれでもまだフレッシュだ。

フレッシュなつもりでいる。

世界はいつでもフレッシュだ。

見知らぬものばかり広がっている。

おれはおれのことも知らないで、だれもいない路地を歩いている。

一人で歩いている。

歩きながらおれは考えた。

おれの今年の目標を考えた。

「レッツ・ビギン、ビー・ポジティブ」

おれは去年、「心身ともに健康を」と念じた。

早い段階でくじけた。

遅くなって健康志向に目覚めた。

現状維持もいい。

だが、せっかくなら、なにかを。

上に積む、天に昇る、外界を見下ろす。

おれは天才なので、おまえらのかわりに世界を見てやろう。

おれの天才で、おまえらに世界を見せてやろう。

アルコールに漬かりきった頭でおれはそんなことを考えた。

世界がいかに悲惨で、抑圧され、死と悲劇ばかりであっても、

おれの軽躁はうかつにも右肩上がりでとどまることを知らない。

おれは薄汚いドヤ街の路地から天に昇る。

おれは地面で冷えてかたくなっている。

せめてあの日の太陽さえあれば、

おれもたのしいおどりをおどったり、

うたをうたったりしていたかもしれない。

おどらないおどりをおどる。

うたわないうたをうたう。

いま、孔雀が死んだ。

おれはドアを開けた。

風が吹いていた。