1月7日、おれは市大病院にいた。昨年の12月29日に退院したので、1週間とちょっとぶりだ。なんの用があって来たのか。病理診断の結果を聞くためだ。がんの手術などでは、切除したものがどうだったか確認する。場合によっては、「まだ切りきれていないです」とか、「予想外のところに転移していました」とかいうことになるのだろう。
とはいえ、おれのNET G1は術前のCTやらPET/CTやらMRIやらで転移がないであろうことはわかっている。ただし、リンパ節へ転移していたこともわかっている。さて、リンパ節の郭清までして、なにか残っているのか?
と、話を聞く前に血液検査とX線検査があった。と、その前にレンタルパジャマの精算をした。入院前の説明で「手術日と翌日は術後着のレンタルが必要です」と言われたので2日分だけ申し込んでいたのだが、結局全部の日でレンタルした。パジャマとタオル使い放題で1日500円。ほとんどの人はレンタルしていた。説明してくれたらよかったのに。
これ、一階の長机みたいなところで受付をしていて、事情を説明すると分厚いファイルからおれの申込書の写しを出してきて、使用日数を確認。ちょうど20日ですね、ということで現金払いの1万円。大病院、いろいろデジタル化しているところもあるが(ここは全体的にちょっと古い感じもする)、まったくアナログなところもある。まあレンタルは業者がやっていることなのだが。
ま、それで血液検査、血液検査の結果は面白かったのでいつもの血液検査と比べてべつに記事にしたい。X線は入院中のパジャマからでなかったので、脱ぐのが面倒だった。そのくらい。
それで、結構待つのが通例だと思っていたら、予約時刻より早く呼び出しがあった。診察だ。ノックして部屋に入ると主治医がいた。それは、いるわな。「調子はどうですか?」みたいに現状を聞かれた。正直に「体力がぜんぜん戻っていないです。ものが食べられません」と言った。というか、今日は病理診断の話がメーンだろうから、ものが食えないことなどは、最後に聞けるかどうかと思っていたら、そこから話がはじまった。
おれが入院中に一度腸が止まったりしたのもあって、いろいろ食べるのが怖くなったこと、うどんとお粥、豆腐、サラダチキンばかりの食事をしていることなど話すと、「もっといろいろ食べていい。ただし野菜は注意」(大意)というようなことを言ってくれた。ラーメンも食べていいぞ。そうなのか……。そして、こんなに体力が戻っていないことに意外な反応を示したが、まあ食べる量が少ないということなのだろう。なにせ1日800kcalくらいしか摂っていなかったからな。うーん、もっと食べるかという気になった。そのときは。
そして、話は病理診断となる。まず術前のなんかのあれをモニタに映して、そのあと、モツが出てきた。切ってないボイルしたモツ。そうとしか見えないもの。「黒いところはありますけど、薬品の跡ですから」というが、焼き目に見える。とはいえ、それがおれの大腸とリンパ節だった。
で、その写真に「ここが腫瘍」、「ここがリンパ節への転移」と範囲が示されていた。
「腫瘍ひとつと転移がふたつで、検査通りでした。写真にあるようにマージンをとって切れたので問題ないです」
「ああ、それはよかったです」
と、言ったもののマージンをとって切れていたことの重要性はピンときていなかった。マージン、すなわち余白がある。転移部分と切り取ったモツの端に間になんにもない健康な部位がある。これはいいことだ。AIに聞いた。「切除断端」が陽性であったら、体内に残っている部位に陽性部分が残っている可能性があるということだ。マージンがあるとは、それがない。取り残しはないということだ。たぶん。
というわけで、手術は成功ということでいいんじゃないでしょうか。みなさま、たくさんのご支援、ご声援ありがとうございました。
~大腸NETの話・完~
……というわけにはいかない。話はまだ終わらない。
「それじゃあ来週の水曜日は大丈夫ですか? つなぎ目のチェックをします。それでその次の週に内視鏡を……、次はこの病院ではないところで……、順調に行けば2月上旬か中旬のこの日あたりに手術」
え、なにそれ。いや、もう一つ手術が残っていることはほぼ確定していた。造成したストーマ(人工肛門)の閉鎖である。また天然肛門に戻るのだ。そのためのロボット支援下手術、Da Vinciの性能。それはわかっていた。だが、3~4ヶ月という話ではなかったのか。なんとなくおれは、順調にいって3月か4月、年度末は仕事が忙しいのでできれば4月にしてもらおうとか思っていたのだ。それが2月?
「え、早くないですか? そんなに早くて……なんか問題ないんすか?」
思わずそんなふうに聞いてしまった。「検査で問題なければ問題ないです」ということだった。そりゃそうだ、問題があるのに医者が急ぐ理由もない。いや、しかし、早すぎないか。まあしかし、手術自体は12月上旬だから……でもなあ。もちろん、ストーマは嫌だ。嫌だが、嫌なりにいろいろ調べて、揃えて、それで、いやいや、それでもやっぱり早くこの状態は終わりにしたい。ありがたい話じゃないか。もちろん、ありがたい話ばかりでもない。
「以前にもお話しましたが、手術後は排泄障害があります」
「はい、それはもういろいろネットで体験談など読んで、覚悟しています」
「うーん、まあ、ネットに書かれていることはバイアスがあるからね。ひどいことになった人が書くし、どうしても大げさになるから。でも……」
……でも、なる。それはもう、ストーマ造成手術をしたらストーマができるのと同じくらいの話だ。問題は、どのくらい重いかだ。長いかだ。どのくらい長くおれはおむつを履いて暮らさなきゃいけないかだ。それは、やってみないとわからない。しかし、やる以外の選択肢はない。はっきりいって、ストーマは苦しい。この不快感で、夜も眠れなくなるし、いまこれを書いているのだってものすごく時間がかかっている。入院時には感じなかった、排出時のへんな感じが出てきたのである。おむつのほうがマシだ……。まあ、そのことはまたべつに書く。
で、医師に「ほかになにかありますか?」と言われて、「いや、とくにないです。ただ、ちょっと展開が早いので驚いてしまって」、「先が見えてきましたね」などと話して部屋を出た。いま思うに、「がんのように今後も定期的な検査とかあるのですか?」とか聞けばよかった。そうだ、この希少がん、神経内分泌腫瘍には抗がん剤治療というものが基本的に存在しない。なので、術後の抗がん剤はない。でも、再発の定期検査とかあるんじゃないのか。それはわからん。でも、とりあえずはストーマ閉鎖だ。
というわけで、この話はまだしばらく続く。病院の帰り、アパートからちょっと遠いコンビニの前で車からおろしてもらって、おれは惣菜パンを買って帰って食べた。少し勇気のいることだった。
おしまい。
と、思ったら、配信と同じことを忘れていた。入院、手術にかかった費用だ。この日の帰りの精算で請求された。年末の退院だったので支払いがまだだったのだ。ずばりこんなもんである。

このほかに6,000円くらいなにかあって、だいたい12万円。明細を見るに、たぶん手術だけで120万円、総額で230万円くらいかかっている。日本の保険制度万歳、高額医療費制度万歳と言わざるをえない。財源だの持続性だのむずかしいことはわからない。ただ、おれは一人の当事者として高額医療費制度に生かされた。それは紛れもない事実であって、きちんと記しておかなければいけない。
……そしてその実費も有馬記念の当たり馬券でお釣りがきたということも。
え、年間トータル? なんだそれ、知らねえなあ。
以上。