あがる話

 「自転車ひさしぶりに漕いだら、最後、脚あがっちゃいましたよ」って言ったらなんか通じなくて、「うちのおばあちゃんなんて脚があがんなくて階段でころんだわよ」とか言われて、「脚が上がる」って競馬用語かなんかかよみたいに思ったりした。でも、マラソン中継とかでも言わないだろうか。脚の上がった先行集団をヌデレバ姐さんがごぼう抜き! とか。姐さん言わんか。で、腕を上げたな、などと言えば上達の感じだけれども、サッカー世界では「おい、お前も脚を上げたな」とかいう会話がなされるのだろうか。たぶんなされない。ナサニエルホーソン。バレエ・ダンサーなどは脚が上がるか上がらないかは完全に具体的な話になるのだろう。大股開きはLe Grand Écart。手を染めたら足を洗おう。あれ、手洗えよ。俺の手は血で汚れているんだッ!(集中線) 
 あがるといえば、だいたいアゲアゲで景気がいい感じだが、商売あがったりといったら全然儲からない感じになるが、商売あがったりさがったりだと社長の昔話みたいになる。あがってんの? さがってんの? まあ、あがるには田んぼが干上がってみたいな、もう終わりみたいなところがある。種籾も買えない。まあ、つまりは、大辞林先生viaYahoo! の言うところのこれだろう。 " 物事が終わりとなる。""「すたれる。だめになる。「車のバッテリーが―・る」"しかし、車のバッテリーというのものは人類の言葉というものがわりと出来上がってから相当たって現れたものだろうに、「バッテリーはあがるものである」と表現し始めたやつがいて、そのあたりがしっくり来ているところには頭が下がるが、あるいはそういう「やつ」などいない、というのが正確なところかとも思う。息が上がる、などからの転用か? あとはCD-Rを焼くとか。いや、あれは焼いてるか、普通に。しかし、なにか未知の技術が出てきたときに、しかし我々の言葉はときに従来の動詞を用いてそれを理会しようとするような、そんなところはないだろうか。そういう事柄に名前はないのだろうか。わかんなかったらググれカス。
 しかしまあ、あがるのはナイスだけど、あがりきったら終わり。game over。overにもそういうところがあるのかどうか。Time is up. あがるには下がるが内包されているのだろうか。下がるというより止まるか。まあいずれにせよ腑に落ちるか。ウィッチとしてあがりを迎えてシールドをはれなくなる、トップレスとしてあがりを迎えてエキゾチックマニューバが使えなくなる。いっちょあがり。寿司屋のあがり、ガマガエルを片手にうたた寝ガリガリ君。まあ、生まれてから下降線をたどりつづける俺にはわかりかねる。ただ、すごろくのあがり、麻雀のあがり、ゲームの終わりには淋しさがつきまとう。遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、ケンとメリーは今何処、マリリン・モンロー・ノー・リターン、さて、どうする、折部やすな!?

「キルミーベイベー」キャラクターソングCD やすな HOW TO ENJOY/今日も二人で