笑いの祭典

 お笑いというジャンルが、どうも複雑化しているような気がしてならない。本来は水面下のものである芸についての用語やテクニックについての情報が行き渡り、結果、一億総お笑い批評家といった様相になってしまった。単にお笑いを見て笑っているだけじゃなく、「今のボケを流したのはよかった」とか「このノリツッコミはしつこい」などとテレビの前で言っているのである。昔を思い返してみれば、「テレビでドリフがコントをする→お茶の間は笑う」、そういう単純かつ明快なものであった。本来、お笑いとは単純ですっきり笑い飛ばせばるものだったのだ。
 しかし、たとえば昨夜TBSで放映された『笑いの祭典!!ザ・ドリームマッチ'05』という番組も、最近のお笑いを象徴するような内容であった。普段とは違うコンビをランダムに組ませ、そのネタを競う。ネタを作るまでの過程なども見どころといった具合である。こんなメタ的なお笑い番組、皆さんはどう思いますか。俺は大好きだ。
 そんなわけで、お茶の間批評家気取り全開で感想を書く。

  • 宮迫博之天野ひろゆき
    • これは番組の空気も左右する緊張のトップバッターだが、役目は果たしたという感じ。結果的に一番漫才をしていたのもこの組だろうか。コントの方が作りやすいのかもしれない。
  • 山口智充上田晋也
    • これは面白かった。が、やはり山口の一人舞台という状態。上田も本来の突っ込みをしているけれど、いかんせん山口の芸が目立ちすぎている。これは致し方ないところであり、イラストまで描けるということとなると、やはりピン芸人でやっていくしかないのであり、それが宿命だろうか(事実関係と違うような気もする)。
  • ゴリ+田村亮
    • これはちょっと評価が悪いようだけど、終わるタイミングさえ間違わなければ健闘したと言われるのではないか。たとえば、ロメロ・スペシャルに対して蹴りのツッコミを入れたあたりならどうだったろう、と思うのだ。今回見て思うのは、ネタそのものと同時に、編集というものがいかに大切かということ。キリのよさも笑いにとって必要なのだろう。
  • 田中直樹三村マサカズ
    • これは田中の脚本がよくできていた。面白かった。コンビとしての相性もよかったんだろう。普段ココリコのネタをテレビで見る機会は少ないが、失礼かもしれないが意外な才能を見たという気がした。
  • 田村淳+出川哲朗
    • これは何というか仕方ないような、なんというか。シチュエーションは悪くなかったと思うけど、ネタにパンチがなかった。ちょっと淳の五百万への色気(出川とのコンビを嘆いておいて、ネタで見返してやろう)みたいなのも見えてしまった。しかしなんだろう、なんかもう罰ゲームに見えてしかたなかった。これが出川の力なのか。
  • 大竹一樹蛍原徹
    • これは面白いんじゃないかなと思っていたら、それなりにその通りだった。「俺この夢見たことある!」というボケが、この番組で一番笑えた瞬間だった。さまぁ〜ずにはもっとネタをやってほしい。昔見た、ぬいぐるみ使ったやつとか好きだったな。
  • ウド鈴木川田広樹
    • これは微妙にどうしようもない感じだったけど、ウド鈴木の雰囲気に救われた感じがある。朝丘雪路の言う「瘉し系」という評は言い得て妙か。もっとも、ネタとしてどうかというと、どうかという感じ。
  • 有田哲平遠藤章造
    • これはトリとして「ある意味」面白かった。ネタ自体はダウンタウンのごっつええ感じで見たようなもので、なんというか、もうちょっと面白くならなかったのかと思う。しかし、ああいう着ぐるみが数十万じゃきかないってのはすごいな。

 というわけで、全体的には見ていて飽きなかった。司会のダウンタウンも妙にテンション高くて、実は舞台に出たいんじゃないかって思った。が、やはり客を煽ってハードルを上げてる方が楽しいのかな。まあいいや、これで五百万だとM-1グランプリはなんだって気もするが、来年もやってもらいたいもの。