「報道特集」の感想

 TBSの「報道特集」という番組を見た。取り上げられていたのは、いわゆる「闇口座屋」。ネット上で「役者」を募集し、その「役者」の顔で偽造免許証を作り、それを元に架空名義での銀行口座や携帯電話を作るというお仕事である。最初、記者が「役者希望」を演じてその組織のボスと面接。隠し撮りで手口などを聞き出し、後日会う約束をする。そして後日、待ち合わせには行かず、そのボスの車を追跡、事務所を割り出す。で、事務所の前に張り込んで、出入りする若いのを尾行したり、ゴミを漁ったりするわけだ。これはなかなか推理小説的、刑事ドラマ的でドキドキの内容。思わず見入ってしまった。
 しかし、見入ってしまったのだが、最後がよろしくない。偽造障害者手帳で携帯を作ったらしい「携帯役者」に直撃し、「役者」を乗せていた車の運転手にも直撃。思わず「まだだ、まだ動くな!」と本部のベテラン刑事気分で言いたくなってしまった。で、最後は最初のボスと電話で話して、「違法行為ですよ」とか「10人くらいのグループ」とか「ウチは暴力団と関係ない」とか言わせてお終い。ナレーションで「そのグループは姿を消した……」と。
 えー、何で警察に捕まえさせるまでやんないのさー。そりゃね、あなた、取材源の秘匿の重要性はわかりますよ。そういうのを守らなきゃ、絶対に出てこない情報ってのはある。全部警察に突き出せと言ってるわけじゃない。しかしね、この番組では最初から「取材させてください」って組織に接近してるわけじゃないでしょう。最初から向こうを騙すつもりで記者を「役者」にしてるんだから、相手を守るのは筋違いだ。ゴミまで漁って、何を遠慮しているんだ。それとも、これくらいじゃ警察は動いてくれないのか?動いてくれないなら、動いてくれませんでした、と報道すべきだ。けれど、そんな様子もない。別に社会正義をうったえたいわけじゃない。何でこんなカタルシスの無いものを作って平気なんだ、と、そう言いたいわけだ。こんなろくでもない仕上がりじゃあ、全部でっち上げかヤラセだって思われても仕方ないぜ、ホント。