映画『ゴルゴ13』/私とゴルゴ

 俺はゴルゴにはちょっとうるさい。あくまで「ちょっと」なのだけれど、「やっぱり周りの人物がある程度固定されてた頃がよかったな。『ヒューム卿最後の事件』あたりまでだよ」とか、「やっぱり一番好きなのは『最後の間諜―虫(インセクト)―』かな」くらいのことは言える。なにせ、二年前あたりまでに出た単行本百冊以上を、全て読んでいるからだ。しかし、俺は一冊も買っていない。すべて親が買ったものだ。俺の親、特に母親はゴルゴ13が好きなのだ。挙げ句の果てに、ビッグコミックなんたらまで読んでいた。今でも、週刊モーニングと一緒に買っているかもしれない。
 そんな俺は、静止画に声が吹き込まれたビデオ(アニメと言っていいのか?)や、ファミコン(ゴルゴが敵を殴りながら進む横スクロール。お色気シーンあり)が家にありながらも、実写映画版は見たことがなかった。その伝説的な存在が、いきなりテレビ東京に現れたのだから驚いた。昨夜のは千葉真一版ではなく、高倉健版であった。
 のっけから、外国人が日本語で喋る。いや、吹き替え映画なのだから当然なのだけど、なんだろう、この違和感。いや、漫画のゴルゴに出てくる人だってみんな日本語を喋るから……などとつらつら考えてしまったが、主役の登場でそんなのは吹き飛んでしまった。だって、あなた、ゴルゴ13のはずなのに、どう見ても脂ののったヤクザじゃないですか。なんでヤクザが中東まで単身乗り込んで、国際犯罪シンジゲートの親分のタマを取らなきゃいかんのですか。ワシに教えてつかさいや、健さん
 というわけで、高倉健ゴルゴ13の取り合わせに震撼した俺は、ただちに録画を開始した。このままでは朝の四時まで高倉ゴルゴの虜になってしまう。睡眠不足が続く中、それはちょっとよくない。そして、ベッドで横になりながら考えた。「しかし、誰かゴルゴ役がしっくりくる役者はいるんだろうか?」と。設定上、一応日本人の役者だろうな。男前で、体格もあって……。そうだ、体格は必須だな。雰囲気や目つきやらも大切だが、その点が大きい。そこら辺をうまくギャグにしてたのが、こち亀の、目だけゴルゴの、なんだっけ、後流悟十三か。……そういえば、秋本治はゴルゴ好きだったっけな。なんだっけ、「ラオスのけしのバーのマスター」……。
 まことに不眠にまで効果を発揮するゴルゴ13。その存在の大きさにふるえる思いだ。