- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
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幼少のころより過ごした鎌倉の外れ、ヤクザというのはフィクションの中の存在に近かった。じっさいに「これがヤクザか」と目の当たりにしたのは、修学旅行で行った長崎。グラバー園でいかにもなホステス風の女を連れた、いかにもな白いスーツの男、タクシー運転手に観光案内をさせている。また、大浦天主堂でマフィア映画のようにずらっと横並びになって歩いてくる黒スーツの男たち。あれらはどちらも写真におさめたかったが、使い捨てカメラのシャッターをきる勇気はなかった。
横浜はじまったな。こちらに来てからというもの、ヤクザはめずらしくない。毎朝のように事務所の前を通る。かなり手前から事務所前を遠見する。客人待ちのヤクザたちが所在なさげに事務所の前に立っていることがあるからだ。タイミングが悪いと、整列するヤクザの前を歩くはめになる。それは、照れちゃうので。
というわけで、『アウトレイジ』の冒頭、会長宅前で自分らの組長を待つヤクザたちのようす、まさにこういう感じだよな、などと思う。高級車のナンバー、乱暴な運転。
ただ、それ以上のディープなヤクザの世界はまったく知らない。フィクションで見るのみである。組長の身の回りを世話する小姓のような若い衆はみな白ジャージなのか? 会長はゴージャスな白ジャージなのか? 気になるところではある。知りたいとは思わない。
映画の話はといえば、いろいろのヤクザがいろいろの思惑で絡み合いながらもカラッと死んでいく。サクッと死んでいく。いろいろの方法でスパスパ死んでいく。あまりの冷温乾燥っぷりが、じっとりした夏に心地よいくらい。あまりにもウェットさがない、なさすぎる、そういう風に感じて物足りないという人もいるかもしれない。あるいはなにかこう、スカされているような気になる。
俺はといえば、なにかあまりのサクサクっぷりに画面から目が離せなくなって、たいへん面白かったといえる。重要そうなやつもあっさりと死ぬし、見せ場と言えば『約束のなんたら』のような死にっぷりではない。まったく違う。殺したのが、そのあと埋立地の長い長い直線道路をすたすた歩いていくところがいい。遠くに風車が回っている。北野武の映画がどうだとか、ビートたけしがどうだとか、俺にはよくわからないが、やはりなにかこう、いいじゃないか。
よく知らないが、『アウトレイジ2』という話もあるらしい。配役はどうなるのだろうか。ヤクザっぽい俳優、それらしくない俳優、それがみんな悪人とわかりきった感じで、サクサクやりあう舞台、面白い。誰に出てほしいかと言われても、まあ俺に俳優の良し悪しもわかるわけもなく、浅野忠信とかオダギリジョーとか長瀬智也とか窪塚洋介とか大森南朋とか新井浩文とか、そのあたりでどうだろうという気になる。でんでんとなると、あまりにもあれの印象になってしまうので、少し違うかもしれない。
まあしかし、なにかこうカラッとしててサクサクのスパッとした映画みたいな、そういうものというのは、あってほしいように思う。よくわからないが。