コインはコインの形をしていなくてもいい〜『王立宇宙軍 オネアミスの翼』〜

 Blu-rayレコーダーを買ったがDVDばかり見ていたのは意味がないと、『オネアミスの翼』のBlu-rayを借りた。意味があるのかどうかは知らない。
 『オネアミスの翼』は昔見たことがある。正確にいつかというとわからないが、レンタルビデオで出回ったころのことだ。まだ小学生だったかもしれない。父親が借りてきたものだったと思う。父はアニメに造詣が深いわけではないが、サブカルチャー〜カルチャーの境目くらいで話題になりそうなものはチェックしていたように思う。
 十数年ぶりに見る。覚えているのは大筋のストーリーと二つのこと。一つは女性のおっぱいが映るシーンがあるということ。もう一つは、コインがコインの形をしていなくて、棒のような形をしていること。これである。
 一つめについては、勘違いがあった。俺は何か、外で行水のようなことをしているのを、主人公が見てしまうようなシーンと思っていたが、もう少しはげしいシーンであった。

 二つ目については、ほぼ記憶通りといっていい。駅で切符を買うシーンだと覚えていた。ただ、それ以前にホームレスにばらまいたシーンがあったのは忘れていた。
 たかがコイン、されどコイン。このコインが俺に与えた影響というのは大きい。そうか、フィクションというのはそこまで想像していいんだ。どんな形していたっていいんだ。なんというか、これ一つでものすごく『オネアミス』の世界が広がり、この世のこの世ならざる世界について広がったような気がしたのだ。その印象があまりにも新鮮で、俺にとっての『オネアミス』というのは、そういったフィクションの、SFの広がりを与えてくれたきっかけといっていいかもしれない。
 ……きっかけ? なんの? いや、考えてみればSFを読み始めたのは20を過ぎてからだし、べつに自分で創作活動をするわけでもない。まあしかし、あの自由さというのは、ほんとうにかなり大きいものだった。そういったアイディアが『オネアミス』独自かどうかもまた知らないが、俺にとってはそうだったのだ。
 と、どうもコインにばかり気をとられていたようだが、ほかのガジェット、オブジェ、小道具もすばらしい。切符のシーンでいえば、券売機のすばらしさにも気づくべきである。また、前翼型プロペラ機など、男の子なら誰でも(※要出典 ※Non-PC)好きそうなメカ世界が隅々まで展開されている。レトロ・フューチャー的なものを好む(のは当たり前だろとすら思う)俺の嗜好の根っこのひとつに、この映画があったのかもしれない。
 と、ストーリーやキャラその他についてなにか書くのを忘れたが、文明と人類、3.11後もさらに重要なテーマでもあって、今なお色あせない云々(以下紋切り型・略)。

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