「そういえば、『シャブ極道』見てなかったな」と思った。なにか、役所広司についての記事を読んでいてそう思った。そういう思いはどこからくるのだろうか? AIなど、大勢の日本人男性の顔の中から役所広司を見分けるなんてことは勝手にやってのけるだろうが、「『シャブ極道』見てなかったな?」って、『シャブ極道』にアクセスすることはあるのだろうか。冒頭、スイカに振りかけられるのが塩ではなくシャブだということは判断できるのだろうか? 「しゃぶしゃぶしゃぶ」のギャグを理解できるのだろうか? ごまよりポン酢にシャブは合うという味覚は理解できるのだろうか? 理解とはなんだろうか? 興味は尽きない。
……『シャブ極道』とAIは関係ない。
『シャブ極道』はシャブと極道の話である。わかりやすい。
役所広司がシャブをキメまくって、シャブ・アイで、シャブ・ムーブをし、シャブ・アクションをするシャブ極道映画である。ジャンルが「シャブ極道映画」といっていい。
しかも、役所広司が(この言い方は語弊あるかな)単なるシャブ中の極道というわけではなく、「シャブを日本に広めてみんなを幸せにする」というシャブ論の持ち主なのである。Wikipediaによれば「メタンフェタミンの発明者である長井長義の肖像を飾るほどの覚醒剤信奉者」なのである。これが、シャブ否定論者であり、因縁のある日本一の暴力団組長とやりあうことになってしまうのである。長い映画だが目が離せない。ピンクのグルグルだ。ちなみに役所広司は(やっぱり役名で言ったほうがいいかな)少年時代からシャブを打ちまくっていて、シャブとの相性は抜群。一方で、酒とタバコはゲボゲボになる、というのがおもしろい。それで「みかんジュース」ばかり飲んでいる。女遊びはする。
しかしまあ、なんというか、これはいい映画だ。笑いあり、涙あり、幻覚あり、だ。「『シャブ極道』見てなかったな?」って思ってる人は、とりあえず見るべきだ。損はしないと思う。たぶん。いまどき珍しいであろう手本引のシーンとかあるし。
あとは、余談。この『シャブ極道』の原作は『シャブあらし』という小説。著者は山之内幸夫 。ん? 山之内幸夫 ?
分裂前山口組の顧問弁護士だった人やないの。そして、名作ドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』に出てきて「ヒットマンって言葉を日本に広めたのは私なんですよ」とか言ってた人やないの。
d.hatena.ne.jpそして、たしか「山之内幸夫(特別出演)」みたいにエンドロールに流れてなかったか? とすると、なんかヤクザの顧問弁護士出てくるシーンあったけど、あれか? あれだとすると、本物のヤクザの顧問弁護士がヤクザの顧問弁護士役で出てたということになる。だとすると、なんかすげえな。以上。