顔のない料理

goldhead2005-04-26

 先週の金曜の晩、私は鶏肉のトマトソース煮込みを作ろうとした。ずっと前から放置していた、ホールトマト缶を使ってしまおうと思ったのだ。スーパーで唐揚げ用の鶏肉も買った。後は、タマネギあたりと炒めて、煮込んで、塩コショウなどで味付けすれば完成だ。ただ、魔が差した。「など」にカレールーを含めてしまったのだ。
 頭のどこかに、実家があったころに作った、ナスとひき肉のカレーのことがあった。それは、田中康夫か誰かが雑誌か何かで紹介(本当に記憶が無いけれど、田中康夫が思い浮かぶ)していたものだ。じっくり煮込むようなものではなく、あっさりとフライパンで作ってしまう。それは、ホールトマトを使ったものだった。だから、私は隠し味にカレールーを入れた。はじめは、隠し味のつもりだった。
 料理は不思議だ。味と味を足したからといって、二倍の味になるわけではない。カレーとトマトが打ち消しあい、見た目の濃厚さに比べて、なんとあっさりした出来映えになってしまったものか。あるいは、カレーと割り切るべきだった。具はタマネギとジャガイモ、ニンニク、それにブナピー(http://www.hokto-kinoko.co.jp/shohin/bunapi.html)だったのだから、カレーにするべきだった。私の優柔不断さによって産まれてしまった哀れなキメイラ、顔のない料理。