ささやかな幸運

 こないだの休日出勤の帰宅時のことだ。帰り際、一緒に帰る人が鍵を出して戸締まりをした。全ての扉を閉めたとき、俺は自分が腕時計をしていないのに気づいた。それを使って変身して悪の怪人と戦ったりするわけでもないので、そのまま帰ってもよかった。しかし俺は、どうにも腕時計の無いことが気になって、まだ鍵を出したままの相手に頼んで、扉を二つ開けてもらった。自分の机に小走りで向かうと、乱雑な机の上で見つけたのは、腕時計と、俺のアパートの鍵であった。