中国流はおかわりをすすめるものか?

 どこらあたりと言えるほどの土地鑑もないが、根岸の山を関内方向に下って中腹あたりに商店街がある。その端にある中華料理屋で昼飯を食った。やや遅い時間だったので他に客はなし。テレビからはTVKの競馬中継。店員はおそらく姉弟の中国人。俺はライスおかわり自由の酢豚ランチを頼んだ。俺の注文が早く出てきて、俺はライス一杯おかわりのつもりのペースで食べ始め。連れの人のラーメンが来たところでおかわり。お姉さんがすぐにライスを盛って持ってくる。そして、こんなことを言ったのだ。
「あのー、たりますか?」
 俺は、何を言われたのかさっぱり理解できなかった。いや、別にライス一杯先に食っただけで、酢豚の配分などは予定通りだ。それに、俺の外見が大食いデブというわけでもない。むしろ、おかわりしなさそうなタイプかもしれない。はて? が、気づいたのだ、ライスの量だ。一杯目は山盛り気味だったが、おかわりは普通盛り。これか、これのことか。
「これで十分ですよ」
 と、俺は答えた(ブレードランナーの屋台気分)。「ああ、そうですか、よかった」、とお姉さんは笑った。いやはや、サービス精神旺盛だ。
 ……が、俺は似たような光景を思い出した。中華街外れの中華料理屋で「わんこそばか?」というほどおかわりを進められたこと。それが、違う店で二回ほどあった。そうか、これは中国流なのか。そうか、あの、全部食べきるのは逆にマナーに反するという中国流なのか(最近では本国でもこの風習は廃れつつあり、あるいは残ったものを包んで持って帰るという風習ができているとどこかで読んだ)? あるいは、中華街あたりで生み出された、好感度アップのテクニックなのかもしれない。
 いずれにせよ、質より量の俺はおかわり自由&わんこそば方式大歓迎であると言わざるを得ず、もう一つの可能性として俺の品性の浅ましさを見抜かれているというだけの可能性もここにきて思い至った次第である。