『八月の濡れた砂』/監督:藤田敏八

八月の濡れた砂 [DVD]
『エロスは甘き香り』に続いて藤田敏八作品。日活青春映画の掉尾と言われる名作……とのこと。
○青春……といっても、さわやかで明るい方面ではなく、もっとドロドロとして、やり場のないエネルギーがあって、アンニュイで、って方面。舞台は真夏の湘南。
●夏の湘南……。俺は鎌倉の出だが、夏の湘南海岸は知らない。部屋にこもってスーファミしてて、遠くに海は感じていて(窓から遠く見下ろせたからね)、そこでは若い男女がいろいろと謳歌しているのだろうと、悶々としながらも。そんな夏……というとちょっと時代が違うか。ちなみに、湘南のどこだかさっぱり土地鑑が働かなかった。江ノ島も映ってなかったように思うし。商店街の感じから材木座、入って鎌倉かと思ったが、あるいは西湘の方かもしれず。
○メーンキャラの一人、テレサ野田にしびれた。映画の中の風貌のまま今この時代に出てきても違和感がない。スタイル、ファッション、気だるい感じ。で、後からこの出演時に14歳だと知って驚く。輪姦されたあと浜辺に放り出されるところってのが登場シーンだものな。
●途中で、あれ、これやっぱり村野武範じゃんって思ったが、どうしても食いしん坊万歳な村野の昨今と重ねられない、もちろん当人だから重なってしまうけれど重ねたくない、そんな雰囲気。ワルはワルだけれども、どちらかといえば優男(広島カープでいえば高橋建)で、海の家のシャワー室で行きずりの女犯すシーンとかはしびれる。
○劇中、テレビから流れるプログラミング(?)の教育番組みたいなのは何だったろうか。教育テレビでこういうのやっていたのだろうか、1971年。
●音楽よかったなあ。このあたりの映画を観てると、だいたいそう思う。
○こういう乱暴さってのは、流行る流行らないとかじゃなくて、もう今の日本映画には無理な感じだろうか。時代の空気。そんなものが色濃く。今の時代も、やがて二十年、三十年後に、ある種の空気を持って将来に迎えられるのだろうか。
●ラストシーンも、なんか行き場のあるなしの両立というか、かっこいいよ。かっこよすぎるよ。
○もっと若いころに、登場人物と同じくらいのころに観たら、もっとインパクトあったろうか。どうだろうか、あるいは拒否反応を示したかもしれない(まぐわいのシーンに食いついたとしても)。そのあたりはよくわからない。観たのは今の俺なので。

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