朝日杯FS

 桜木町場外の人出に少し驚いた。俺の感想を素直にあらわせば「G1の日みたいじゃないか」であった。別に朝日杯がG1に足らないという話ではない。俺の言う「G1の日」とは、数年前の「G1の日」なのであって、「前日ならともかく、当日には行く気しないぜ」というくらいの人出のころの話である。なぜだ? カレンダー配布してたからか? 有馬の入場券販売か?
 それはそうと、肝心のレース。これが、えらく逡巡して参った。俺は最初からジャリスコライト本命と決めていた。しかし、人気だ。買い方が問題だ。相手は絞れていた。すなわち、フサイチリシャールが最高評価の相手で、後は内からダイアモンドヘッド、ショウナンタキオンアポロノサトリスーパーホーネット。これをどう組みあわせるか。まずリシャールは信用できそうだから、三連単軸二頭でいくか、マルチにするか、買い目をおさえて三連複に振るか……。
 するとだんだん、ジャリスコライトへの信頼が揺らいできた。鞍上はケント・デザーモ。信用するに足る騎手には違いない。しかし、俺はどうもデザーモに全幅の信頼を置けない。具体的にどうとは言えないが、日本競馬にフィットしていない部分があるように思える。「最後まで追わない」というのはともかくとして、何かこう、それが奏功することもあれば、不発に終わるとちぐはぐ、みたいな。二着、三着はありそうだが、というヌルデザーモの印象。
 ふとそこで、思考へオッズが侵入してきた。アポロノサトリ、いいでっすよー、という具合だ。コジーンといえばどちらかといえば東京直線向きだが、考えてみればアドマイヤコジーンはこれを勝っている。スーパーホーネットに一回屈してるとはいえ、タイムも詰めてきている。それに、なんといっても単勝で二十五倍超。例えば、相手と信用していたリシャールと組みあわせて……。
 そうだ、俺はまずリシャールを先に思い浮かべた。ジャリスコではなく。とすると、俺が本当に信頼しているのはリシャールの方じゃないのか。そう思って組み立ててみると、しっくりきて不安がない。鞍上の福永祐一よし(怪我のことは知らなかった)、前走のレースっぷりよし、血統よし(あるいは生粋のマイラーかもしれないという意味で)……。
 と、俺がフサイチ本命を決定したのは、なんと家に帰ってからであった。場外で馬券を購入せず、買い物をしてセブンイレブンからジャパンネット銀行に金を入れて帰ってしまったのだ。で、馬券の方もシンプルにリシャールからの馬連。これでいいや、と。
 で、結果としてこれがよかったわけで、本命サイドから馬連で二十五倍つけば御の字でしょう。それに、準メーンで馬単の表裏一点馬券を買っていたら、人気薄の内田博幸ファイトクラブが頭でこれもよし。なんというか、珍しくよかった日だった。いやはや。
 鳴尾記念は最内のトウカイトリックからちょっと。メジロマントルの番手から四角ラチ沿い捲りを期待してのこと。しかし、芹沢純一のコメントにあったようにズブいエルコンドルパサー産駒で、軽快なヘクタープロテクター風のマントルに追いつけず。できれば、イケハヤブサくらいの位置に居て欲しかったが、なかなか難しいようだ。人気薄の逃げ馬。そういえばメジロにはこういう高齢逃げ馬がいたな。えーと、メジロスズマルだ。まあ、レース前にスズマルのことを思い出しても買えたわけではないが。