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年末年始で一番の楽しみと言えばこの番組をおいて他にはありません。一年くらい待っていたのでしょうか。こうなると、見るのも惜しい気がするほどのものであります。NHKにしたって力の入れようは相当なもので、一月一日から山本耕史と片岡愛之助を生出演させたり、昨日だってぶっ通しで総集編再放送でしたからね。こうなると、『義経』の印象は遙かかなたに、『功名が辻』への期待も露と消えるようじゃありませんか。いや、私がこのドラマが好きで仕方ないだけなんですが。
さて、内容というと、副題通り「最期の一日」。戦場のシーンや回想シーンももちろん見どころに違いありませんが、やはり榎本武揚と土方歳三が語り合うシーンが一番の見どころではなかったでしょうか。そして、個人的には、三谷幸喜が榎本武揚をどう描くのかというのが、大きな焦点でありました。
榎本の人物評というと、やはり毀誉褒貶相半ばするものであります。そこらあたりは本編のあたりでもメモしておいた覚えもあります（id:goldhead20041122#p1、id:goldhead:20041122#p2）。そうだ、草なぎ剛が一瞬だけ演じていた榎本像がまずありましたっけ。
昨夜登場の榎本は、ふらっと現れて洋酒をラッパ飲み。そこらあたり、どうやら悪ガキ系という感じもあって、“バラガキのトシ”と通じるところがあったって描写だろか。多分、函館まではやらないだろうから、ここらあたり想像するしかない。
この「多分」は気持ちよく裏切られた感じです。しかし、あの一瞬の榎本は、多少投げやりな雰囲気（草なぎ君が、という意味ではなく）もあったりしましたっけね。で、今回描かれた榎本は、やはりこれはこれでつかみ所の無い感じで、「相半ば」感が出ていてよかったのではないでしょうか。ただ、やはり彼についての悪評は悪評で知っていました（福沢諭吉なども「腹を切って死ぬべきである」と評していたと思います）ので、どこかでひっくり返るんじゃないかという、ちょっと疑いの目で見てしまった部分はありました。しかし、“ロマンチ”でなおかつ“リアリスト”として何か通じ、最後の土方の呼びかけによって、生き残ったことが肯定される。これは気持ちのいい描かれ方ではなかったでしょうか。あと、もうちょっと、「べらんめぇ」口調でまくし立てる台詞があればな、と思いましたが。
気持ちのいい描かれ方といえば、やはり土方の最後の戦いでしょうか。「最期の一日」であるのに、土方の意識が大きく転回する、これは意外でありすばらしい発想だったと思います。死に場所探しから、生きるための戦い、新しき国への（……『義経』が顔を出しましたか）戦い、と。たしかに箱館政府の重鎮で戦死したのは土方ただ一人というところを見れば、死に場所を見つけたとも言えるでしょう。しかし、最後まで敵の大将を狙って戦ったというのはいい（サンドイッチという小道具も巧みな使われ方をしていました）。
そして、正真正銘の最期のシーンにはしびれました。腹に銃弾を受けて落馬、すでに息絶えている、というのが定説的な描かれ方。しかし、その後に大立まわりに「新選組副長、土方歳三」の名乗り。これがたまらない。司馬遼太郎『燃えよ剣』のラストにも匹敵する（というと言い過ぎでしょうか。……といってしまうのは私が『燃えよ剣」のラストが心底好きなだけかもしれませんが）のではないでしょうか。最後の最後だけ登場する近藤勇の顔もよかった。香取慎吾の顔がいっさい出てこないのは、なにか大人の事情でもあってのことかと下衆の勘ぐりをしましたが、いやはや。
そういえば、またこのラスト一作となっても、脇役の配役がよかった。特に隊士であるところの相馬主計（小橋賢児）に市村鉄之助（池松壮亮）。相馬主計は「新選組最後の隊長」（id:goldhead:20041130#p2）で、それを匂わすような台詞を入れるあたりがにくくていい。そして、重要なラストシーンを飾った市村。市村が無事に日野にたどり着かなかったら、今この新選組人気（……人気、というと薄っぺらいかな）の何割かが減っていたのかわかりはしない。あの荒野をひたすら駆けていく一粒の種の後ろ姿、あれはたまりません。
まあ、ラストシーンまで来たので、ここらあたりにしておくか。しかしなんだ、「近藤は死んだけど、土方は生きて戦っている」というところの続きとして『新選組！』から『新選組！！』。こうなったら、斎藤一も島田魁も永倉新八も相馬主計も市村鉄之助も生きているじゃないか、ということになりはしないか。配役もオダギリジョーや照英そのままで続編行かないか？ むろん、その後のエピソードも勘案しなきゃならん。とすると、やはり市村。市村が西郷隆盛の軍に加わり、官軍相手に戦う続編であるところの『新選組！！！』……というのはさすがに無理があるか（市村の西南戦争戦死説は不確かなものらしいですが→http://rokujo.squares.net/shinsen/hinofesta/honjin/honjin2.htm。……むむむ、市村が日野を訪れていない説などもあるようで、歴史は難しい）。まあ、とにかく三谷版『田原坂』なんてのは見てみたい見てみたい。NHKもこうなったら三谷推しの一手で、ばんばん幕末ドラマ作ってくれないものだろうか。お願い。
