新選組!の感想

 何はともあれ最終回でありこればかりは大団円とならぬのが新選組の定めなれば探してみますか涙の中の一輪の花。とはいえ捨助の話からしたくなろうせねばならぬ誰もが驚いたであろう最後の斬り込み花舞台。大将が囚われの身となりていざ犬死にであれ決死の覚悟で斬り込む奴は誰かいないのか。皆の言う大義も分かるが俺だけは死んでやろう死ぬ奴一人せめてもの手向け。これはまさしく徳川の大将に新選組の殉ずるが姿そのものではないですか。カラカラ回る風車の時代に吹かれて回る彼らの姿の象徴の如く、捨助こそ新選組そのものなのでありましたか。言われてみれば志士の定義はと問われて「誰に頼まれたわけでもないのに国のために奔走する人」というような事を答えたのは司馬遼太郎でしたかこれもまた「呼ばれもしねぇのに」を口癖とする捨助を思わせると言えば勘繰りすぎでしょうか。
 それにしても捨助死にますか俺は驚いた。優香が斬られたのにも驚いた。藤原竜也沖田総司最期の大立ち回りが用意されていたのは嬉しく思いその刀抜くまなざしにしびれたのではありますが。優香といちちゃいちゃするあたり「三谷幸喜は隨分と沖田に幸せな最期を用意したものだ」と思っておりましたがまさか優香が斬られるとは思いもしなかった。血反吐拭いきれずにゴロンと一人布団に横たわる沖田の姿に生者必滅の悟りとは虚無感漂う思いがけぬノワール
 一方思いがけぬ活劇的結末となりしは斉藤一。さすがヒーロー出身のオダギリ(続きは明日書こう。今日は午前中直行で出ていたんだ。しかし、土、日と一番急いで書こうとしたら、句読点無しの変な文章になった。日本語で一番時間を使うのは句読点なのやもしれぬ)ジョーだが、あれはもう続編とか番外編とかやるんでしょうかね。しかし、「新選組三番隊組長」と名乗るあたり、『燃えよ剣』の最後らへんを思わせるじゃないですか。
 活劇的といえば、原田佐之助が後に満洲に転じて馬賊になったという説。これもはじめて知りました。彰義隊に加わり戦死、ってのは知ってましたが。真偽はおいといて、これはロマンのある話じゃありませんか。ちなみに、満洲浪人の素性というやつはいろいろで、石光真清の自伝などを読んでいると、そのなかに原田の一人くらいいたところでおかしくなというのが混沌の満洲であります。
 原田とコンビ的だった永倉ですが、こちらはセリフで締めてくれました。「あの人を悪く言っていいのは、俺だけだ」。袂を分かった盟友にこのセリフ、しびれるじゃないですか。ところで、チンピラが押し掛けたときは、永倉の一喝で引き下がらせるというネタかと思いました。明治の頃、老年の永倉が映画館で絡んできたチンピラ連中を、ただの一喝で追い散らしたというエピソードが残っていたので。
 北海道というか結局蝦夷地まで転戦する土方歳三。負けてばかりのようで、実際負け戦だったのですが、局地的にはけっこう勝ちもありました。ここらあたり、土方が単に組織作りに長けていただけでなく、近代戦の指揮官としての才能もあったのではないかと思います。
 が、このドラマではそこらへんはどうでもよく、やはり近藤勇の友としての‘トシ’なんでしょうな。この一言をつぶやいて、振り上げられる刀、そして「完」。いい終わり方と思いました。ただ、ちょっと難癖言うならば、途中途中色々な場面が入ってきて、処刑までの緊張感に少し欠いた。もっとも、群像劇なわけで、最終回といっても尺が決まっている以上仕方はないか。
 年末の総集編で、見逃した最初の半分以上を見てから、もう一度総括したいな。ここまで熱心にドラマを見たのは久しぶりだった。