新選組!の感想

 いよいよ四角回ってラストスパートの「新選組!」。しかし、冒頭は一息入れて土方の洋装小話。そりゃ確かに急に服装が変わったらおかしい。今、いきなり未来人の軍勢に攻められたとしよう。そして、急に知ってる奴が銀色のつなぎ服を着て「まずは形から」などと言ったらどう思うだろう。「頭は大丈夫か?」と言わざるをえない。しかし、二十二世紀にはみんな銀色のつなぎを着て、チューブ式のエアカーに乗っている。それが史実であり、銀河の歴史はそうやって紡がれていくのだ。しかし、深刻さを増す中にあって、急に「用はどうやって足すのだ?」「ここのボタンを…」と珍舞台をやらせてしまうあたり、三谷幸喜の真骨頂か。外伝としてこの三人組のコントなど見てみたい。
 さて、珍舞台ならぬ鎮撫隊。発案者は勝海舟。江戸で徹底抗戦を主張する近藤に対して甲府へ追いやろうとする勝。近藤が去った後、「近藤は真意をわかっておった」などと言う。しかし、残念ながら香取慎吾近藤勇は単に主戦論者にしか見えなかった。また、「あれほど悲しい目をした男は…」などという台詞に、ふと原哲夫の漫画を思い出した。だが、悲しみを知った目が一番強いのはジャンプの漫画の中だけである。
 またもや敗北せしは敵の姿も映らぬ甲州勝沼の戦い。二時間で終わったと言われているから、描写してもしかたないというのか。そして、ついに永倉と原田の離脱。これにはちょっと急だな、という感も拭えない。まあ、歴史は後の世の劇作のためだけに積み重ねられてきたわけではないから仕方ない。
 ちなみに、残されているもうちょっと具体的な台詞は以下のようなものという。会津行きを持ち出した永倉に対して近藤が、「拙者はさようなわたくしの決議には加盟いたさぬ。ただし拙者の家臣となって働くというのなら同意もいたそう」。それに永倉が「二君に仕えざるが武士の本懷でござる。これまで同盟こそすれ、いまだおてまえの家来にはあいなり申さぬ」と言ったとか(『図解雑学 土方歳三』ナツメ社より:これは仕事の関係でたまたま社にあった本。土方を追うにはわかりやすくていいです)。直参旗本になった近藤勇が思い上がった、というような解釈もあるが、当然このドラマで主役は悪く描かれない(描けない)。かといって、志は同じなれど、泣く泣く袂を分かつという感じでもなく、ちょっと中途半端だ。
 逆に袂を分かつどころか、「誠」の旗に目覚めてしまったのが斉藤一新選組最後の頭はこいつ(違った→訂正:http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20041130#p2)なので、ここらあたりで一発意識革命が起こらなきゃ困る。ひとしきり叫んだ後、ちょっと照れくさそうになるあたりがよかったです、オダギリジョー。そういえば、テレビブロスオダギリジョー(この場合オダギリの、と区切ってよいものか?)の連載が隔号であるけど、なんかなかなか微妙な味わいがあって、それもいいです。
 一方、いつもよかったと誉めている藤原竜也の沖田君。姉上との会話もよかったな、「血なんて吐いて偉そうに!」。小説などでは早々にフェードアウトしてしまう(表舞台に立たなくなる)感じだが、このドラマは最後までちゃんと追ってくれるようだ。正直、ここまで長生きしたっけ、という印象。そして、最後の大立ち回りとはいかないが、らしさを見せる深夜の稽古のシーンもよかったですね。
 で、その稽古で洋装に木刀の土方さん。肝心の永倉離脱シーンには居らず、何をしていたかといえば、菜葉隊を呼びに行っていた。その菜葉隊の隊長を演じていたのがビビる大木。葉っぱ隊云々よりも「菜葉隊の小松です」という台詞にしびれた。この馬鹿な台詞を大真面目な顔でやってのけたのだから、なかなかの男である。
 なかなかの男ぶりを見せたと言えば、やはり人妻を深夜に呼びつけるトシ様にとどめを刺そうか。「その気になって来たんだろう?」「その気って何の気ですか。だいたい、そんなお召し物でどうなさるおつもり?」「このボタンってやつを外すと……」「それで?」「撫でて鎮めるに決まってんだろう!」――チン選組始末記(なぜ俺はエロ小咄と‘淑女の雑誌’風のオチを書いたのかよくわからない。これも日記の妙味なのか)。