その時歴史が動いたのを見た

 俺が幕末に興味を持つに至ったきっかけは、司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んだからである。しかし、さらにもう一歩さかのぼることができる。その本を手に取る前夜に見た「その時歴史が動いた」である。内容は、新選組副長である土方歳三が‘刀の終わり’に気づき、洋装をして近代戦を学びはじめた、というようなもの。それを見て、土方に興味を持ったのだ。
 さて、昨夜はまるで「新選組!」を補うかのような企画であった。ためしに公式サイトhttp://www.nhk.or.jp/sonotoki/を覗いてみると、以前放送したものを再構成したものという。放送リストを見るに、今年の大河のテーマ以前から、やたらと新選組や幕末の話が多い。たしかに日本の歴史の激動期ではあるが、これはもう司会が「松平」アナだからに違いないと勝手に思っている。
 しかし、そのサイトにある「番組の内容について」http://www.nhk.or.jp/sonotoki/sonotoki_syokai.htmlの項はすごい。「 五稜郭内の再現シーンで洋室が出てきたが、五稜郭は総て和室ではないのか?」とか、「市村鉄之助が日野に行ったというエピソードが紹介されたが、最近の研究で、市村は日野に行っていないという説が発表されているのに、なぜ日野訪問説を紹介したのか?」とか、幕末ものに限らず、やけにマニアックだ。俺なんぞは、市村はその後西南戦争に抜刀隊として参加して死んだというストーリーしか知らないぞ。しかし、NHKも誠実で細かな対応をしている。ここらあたり、NHKの面目躍如と言ったところか。
 ところで、再現フィルムはNHKの過去のドラマかと思っていたら、「日本テレビ時代劇スペシャル・五稜郭」というのも驚きだ。俺、そのシリーズの「田原坂」をレンタルビデオで観たことあったっけ。『新選組!』最終回で西郷が「幕府への恨みを近藤一人に背負ってもらう」とか言っていたけど、結局西郷自身も「侍の怒り」を一身に背負って戦い、敗れる戦をしたのだから、歴史とは皮肉なものだ。もちろん、市村が参加したかどうかは知らぬが、「薩長への恨み」を抜刀隊で死ぬことで果たしたようなやつも多いだろう。日本が次へ進むために、決して無駄な戦じゃなかった。
 しかしやはり、市村に写真を持たせるあたり、土方は流石と思う。当時から「役者のよう」と評されていた己の姿が、後世にも大きな影響をもたらすと思ったに違いない。実に近代的な宣伝広告戦略であるとともに、見事なダンディズムじゃないですか。と、俺は勝手に思っている。豊玉宗匠としても「わが齢氷る辺土に年送る」なんて残しているしな。
 そういえば、土方、土方言ってるけど、内藤隼人さんはどこに行ったのだろう。昨夜の放送で、フランス人の研究家がフランス軍人の残した手紙を紹介していたけど、その中でも「土方」っぽかったな(筆記体で綴りはわからないけど、内藤じゃないな)。いつ戻したんだろうか。そりゃ、‘鬼の副長’土方の名の方が、味方は盛り上がり、敵は脅えるもんな。なんかもうちょっと「新選組!」について書こうかと思っていたけど、どうも長くなったのでやめよう。