グッド・モーニング、ミスタ・DJ

 だから本当に、朝はどんな風に起きるのかとか、やたら他人に話すようなものじゃないんだぜ。それでも口が滑ってしまうのが僕の悪いくせなんだけれど、僕は携帯電話から流れるFMラジオでお目覚めするんだ。本当だぜ。たとえばさ、いくらお気に入りのメロディがあったとしても、毎朝そいつが僕をたたき起こすとする。すると、僕はもうそのメロディにうんざりするようになって、それってお互いにいい関係とは言えないよな。だから、何か適当な音楽が流れてくれればいいんだ。ろくでもない曲でもそれでさよなら、ってわけさ。
 ところが、僕はやっぱりとんでもないくそ間抜けだったわけだ。FMラジオって、ひっきりなしに流行りの曲を流している印象があるけど、DJ諸君のおしゃれなトークだって忘れちゃいけなかったんだものな。それで、今朝僕を夢の世界から引き抜いてくれたのは、暴行事件で話題の政治家氏の話とあいなったわけだ。そして、FM貴族のDJ氏はさもその政治家氏を知ってるふうなことを言うんだな。うまいことほのめかすって感じでさ。でも、その政治家が6フィート半もあるカラテのブラックベルトで、暴力をふるうもんだから秘書がどんどん辞めてくんだってさ。本当かどうかなんて知らないさ。けれど、こんなので目覚めるってあんまり気持ちいいもんじゃないってことは誓ってもいいよ。
 でも、そのあと僕がベッドから降りて、身支度して出ていく世界ってのは、そういう6フィート半の大男や、ほのめかしのうまいFM貴族たちの世界なんだ。……やれやれ、やられたね。思い出すだけで気が滅入ってしまうのに、またこうしてあいつらの世界を手助けてやってるんだから、ケツをもがれたような気分になってくるな。