『EXODUS』UTADA

ASIN:B0001DQ5WI
 私、宇多田ヒカルけっこう好きなんです。もちろん、次のアルバム(ASIN:B000F9UE8E)も予約済みです。‘売れ筋のものは数年後に安価で’をモットーとする私にしてはめずらしい。しかし、その分の元を取ろうと思ったわけではないですが、百円以下で米国進出アルバムのこれを買ったというわけです。
 前評判、というか世間的な後評判は見聞きしてきて、曰く歌詞がビッチであるとか、歌詞がビッチであるとか、歌詞がビッチであるとかは知っていました。あるいは、単なる米国売れ筋風すぎてつまらない、などと。私、後者に関してはちょっとひっかかるところがありました。なにせ私、あの、肌も露わな黒人女性がこれ見よがしに腰などをウネウネ、クネクネさせながら踊るようなPVに付いてくる音楽、というやつにほとんど興味を持てませんですので。
 それでもって、通して三回ほど聴いたこのアルバム、どうでしょう。そうですね、半分くらいの曲はウネ黒っぽくて退屈でしたが、いくつかの曲は宇多田らしくていいんじゃないかと思いました。あんまりけなされるようなデキではないように思います。
 いい紙を使った対訳ブックレットがついていて、そこに訳者と本人の対談が載っていました。

新人だからこそ、ミュージシャンとしてのキャラの第一印象が大事だと思うんです。(中略)やっぱりユーモアと「この人は頭がいいんだな」というのを伝えたかった。(中略)頭はいいんだけど、時にはバカな歌詞にしてみたり。ポップって大衆音楽だから。

 どうでしょう、このクレバーさ。このあたりの感覚が、あまり他の歌手などには見られないところだと思います。ビッチ歌詞をポーの詩を引用して中和する計算性。考えてみれば、米国盤だからこそ、この答えを出した。では、日本向きの歌詞ではどうでしょう。そう、あの、「秋のドラマの再放送」だの「十時のお笑い番組」だの「写真付きの年賀状」だのの身近さ、庶民性。これも計算された色に違いないのです。本来そんなの、セレブ宇多田には無縁のものですからね。そして、一方で米国のビッチエロ歌詞を匂わせ、底の深さを感じさせ、ダウンタウンの番組に出てははしゃいでみせる。
 ここのところが、鼻につく人には臭くてたまらないところではないかと思います。私はといえば、本来金持ちは嫌いですけど、宇多田ヒカルの楽曲がおもしろいし、本人がいい感じ(id:goldhead:20050603#p4、id:goldhead:20051115#p3)なのでなんの問題もない。これで音楽や歌詞がつまらなかったら見向きもしない。そんなところです。
 かつて、宇多田を討つ者がいた。彼はきっと、宇多田を追ってアメリカに行った。そして、アメリカではUTADAがたいした評判にならず消えたのを見て、それ以来アメリカに居着いて、帰ることはなかった。そう思いませんか?