開け地獄の門、君はマーティーズ・シフトを見たか?

goldhead2006-07-18

また、わたしが見ていると、子羊が七つの封印の一つを開いた。すると、四つの生き物の一つが、雷のような声で「出て来い」と言うのを、わたしは聞いた。
ヨハネの黙示録6-1


 わたしは、森笠繁が退くのを見た。そして、「来たれ」の声とともに井生崇光が呼び寄せられたのを見た。外野には前田智徳嶋重宣が会話を交わし、ひとびとがどよめく声がうねりのようにスタジアムを包んだ。
 見よ、内野には五人の野手が立ちふさがる。見よ、地獄の門から召還された門番のように内野を封印する姿を。見よ、一匹の大きな蛇のようにうねり、敵の打球を捕獲する姿を。人智のもたらした異形の布陣を見よ。
 ブラウンシフト、もしくはマーティーズシフトと呼ばれるそれは、あまりにも堅強であった。また、その布陣とともに、とつぜん永川勝浩の制球が定まった。三塁側の人々は、口々にマーティ・ブラウンを誉め称えた。死を目前にして命の水を授かったように、三塁側は祝福の中にあった。
 しかし、これは野球の神に背く業であった。野球の持つ黄金の比率をないがしろにし、まさに律を破るおこないであった。ソドムとゴモラは焼き尽くされ、バビロンは再び滅ぶ。ワンバウンドした投球は、一度ホームベース方向に跳ねるが、神の御業にあやまりはなく、カープは破れた。
 わたしは、一瞬の栄華とその崩壊を見た。しかし、わたしは、内野手が五人になるだけで、あれだけ異様な光景を目にするとは想像だにしていなかった。わたしは、いずれ人の智による業が、野球の黄金律をうち破ると信じている。
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・というわけで、先週の土曜日に横浜スタジアムで横浜×広島戦を見に行った。試合開始前後はけっこうちゃんとした雨がぱらついてきて、自らの雨男ぶりを呪ったりもしたが、以降は止んでくれた。
・広島の先発は大竹寛だった。結果的には最小失点に抑えたものの、印象としてはあまりよくない。ボール先行のシーンが多く、何度もカウント2-3を見たように思える。RCCの携帯サイトのコメントなどによると、清川コーチも本人も「ストッパーのような投球をしてしまった」とか。「自身持ってど真ん中に投げろ!」という応援の声も聞こえたが、制球力というよりメンタル面でまだまだ進歩の余地があるように思える。
・中継ぎ陣は安定していた。西武からのトレードで来た青木勇人、それに林昌樹。この二人はぴしっと安定している様子だった。
・連戦の最初だし、永川の登板はないかと思ったが、その予想を裏切って登場。しかし、こちらも大竹と同じくボール先行の印象で、わかっている話ではあるが制球力に難あった。ただ、やはり存在感は大物。ファン心理として「見られて良かった」が先行していたりする。
・打撃陣について、この日は低調。レフトでの前田の仕草など、いつも通りかもしれないが疲れを感じさせた。一人だけストッキングを見せる梵英心、あわやの当たりなどもあってよろし。
・この日は、たとえば「ノーアウト二塁の場面で打者が四球になった場合、二塁ランナーは進塁するのかどうか」ということを説明しなければならない人と同伴だった。俺は基本的なルールから、「この青木という投手は……(id:goldhead:20060323#p6)」、「この内川という選手は(以下、広島がドラフト前に逃げられた話)」、「三浦大輔の、川村丈夫のピッチングフォームは……(id:goldhead:20050427#p2)」などと野球の魅力をいろいろと伝えようとがんばったが、果たしてできたかどうかは不明である。
・翌日と翌々日の試合は、テレビとラジオで観戦した。三戦目など、そとに花火大会の生音、耳にジャイアンツナイター(なぜかこのカード)、テレビはTVK、そのTVKの画面で花火確認と、かなりわけのわからないことになっていた。初戦で不調に見えた前田も復調で、最後はヒーローインタビュー。内野手五人体制と、どっちがレアだったろう? 相手チームで気になったのは古木克明で、俺はパンチ力が魅力の選手と思っていたが、なんどかバントを失敗。最後の最後は妙なセーフティを仕掛けて凡退と、リズムが悪いように思えた。

川村 永川