http://www.nikkansports.com/battle/kameda/p-bt-tp1-20060801-69023.html
キューピー人形を手に、ハンバーガーをほお張りながら調印式会場に現れた亀田
何のシュルレアリスムでしょうか。まあ、それはともかくとして、記事の見出しの「亀田が度肝抜く演出で挑発!仰天調印式」、これも持ち上げすぎではありますまいか。毎度毎度の挑発パフォーマンスで、今さら言うのもなんですが、なんとも安っぽくセンスがない。度肝も仰天もない。本当に相手を怒らせるようにも見えず、かといってクスリと笑わせるユーモアもない。見ていて恥ずかしくなるようなしろものです。
私はボクシングファンではないので、ほかのボクサーたちがどう振る舞うかはよく知りません。それは断っておきます。その上で私は、ボクサーは品行方正であるべきだとは思いません。試合前から勝負は始まっているわけです。メンチ切るのも結構だし、挑発して怒らせるのも作戦だ。調印式で殴り合いはじめるのはさすがにプロレスだけれども、ピリピリした緊張感くらいあったっていいし、エンターテインメントの側面があってもいい。そういう風に思うのです。
しかし、亀田興毅のパフォーマンスは、どうにも見てもいい感じがしない。本気の怖さもないし、たとえばボブ・サップくらいキャラに入っているところもない。そうですね、ガチンコファイトクラブみたいな中途半端さを感じる。それにはおそらく、対戦相手も含めたとてもぬるい空気(http://www.nikkansports.com/battle/kameda/f-bt-tp1-20060801-69234.html……「紙おむつとおしゃぶり」)が関係しているようのではないでしょうか。そして、結局はこの世界チャンピオンを決める試合まで、その空気は変わらなかった。そんなところでしょう。
しかし、あらためて考えると世界チャンピオンを決める試合まで、ですか。私はボクシングをK-1やPRIDEなどとは一段も二段も違う、あるいは別物と考えていました。競技の純粋性とでもいいますか、その点でオリンピックやなにかに近い、と。むろん、ものすごく大きなお金が動く世界であることも承知している。そして、それらが両立している底知れぬ世界であることを考えると、なんとも敷居が高く入って行きにくかったのです。ところがどうでしょう、敷居が下がって門戸開放された亀田ワールドでは、その両輪のいずれもチンケなものに見える。はじめは、ミーハーもボクシングマニアもファンもアンチも盛り上がっていって、それに乗っかって見ていれば楽しめるかなどと思っていたのですが、よく見たらチンケだった。真の型破りな強者の凄みはいつまで経っても見られないし、作られた王者としてもスケールが小さい。
いやいや、失望にはまだまだ早い。たとえば、文春誌上(山本圭一の記事なども読みたく、ひさびさに買ってみたのです。椎名誠が何百回記念だかで、同業他誌のコラム欄をレビューしていたのが面白かった)で亀田に「プッ」となっていたWBCの王者、ブライアン・ビロリアなど、どうやら本当に強いらしい選手とやる可能性も出てくるかもしれません。どうせ、明日は勝つことが決まっているのでしょうし、逆に王者になってからがスタート。おお、そんなことは亀田本人も言っていましたっけ。まあ、とにかく明日は見るつもりですよ。試合以外の映像に飽きてチャンネルを回している隙に試合が終わっていなければね。