初詣へ

 鶴岡八幡宮氷川神社、川崎大師、江島神社あたりをおさえてしまったので、どこへ行こうかとなった。佐野厄除け大師は気になるが、遠い。かといって、明治神宮に挑む気力もない。
 どこか有名なところはないのか……、と、そこでふと思い浮かんだのが、ネームヴァリュー日本トップクラスの神社、靖国神社靖国神社には一回も行ったことがなかった。正月、初詣のイメージはないが、せっかく思い浮かんだので行った。
 行きの電車の中で、その靖国の初詣中吊りを見る。なーんだ、初詣営業中なんじゃん。まあ、よかった。と、地下鉄の階段を上がると、大紀元の号外配りの人がいて、さすが靖国、と思う。
 が、その先はなんだろう、屋台がずらりと並んで、初詣というより夏祭りの印象。あと、猿回しとかは正月っぽいか。人出もそこそこで、ストレスは感じない。神社としての印象は、あまり神社らしくないというもの。ここらあたり、明治よりとはいえ、歴史の浅さのなすところだろうか。それとも、鎌倉育ちの田舎ものが都会に気圧されたか?
 お参りのあとは、せっかくなので遊就館へ。と、その前に馬像を見つけた。戦没軍馬の像だ。思わず愛馬行進曲を口ずさみ、泣きそうなる。というのは大げさだが、馬や犬や鳩も慰霊しなきゃならん。とくに馬を慰霊せよ。
 遊就館の印象。まず、長い。これがとりあえず偽らざるところ。ところどころ休憩スペースはあるものの、これはきびしい。はじめのうちは解説パネル(やけにデザインがかっこいい)に目を通していたが、「まだ日清戦争」と気づいたあたりからペースアップ&スルー。ここらあたり、小学校の社会科に似た現象やもしれん。なので、アメリカに文句言われているとかいう、そういった表現、あったのかなかったのかもわからない。
 とはいえ、やはり俺は幕末&明治好きであり、そこらあたりの男の子なみには兵器や軍服が好きなので、なかなかしびれる展示は多かった。榎本武揚の軍服とか、例の“錦の御旗”だとか。それに軍服、海軍大将の帽子のてっぺんに星マークが入ってるなんて知らなかったな。時間がないので映像は飛ばしたが、ちょっと立ち止まって水師営の会見のことなど見たり。
 そして、最後の方はやはり泣けてくる。バロン西の展示とかグッとくる。回天とか生で見るとより悲しい。回天や桜花、それに、潛水服で海の底潜って竿の先の爆弾で敵の船底を攻撃する方法とかは悲しい。悲しいと同時に、誤解を恐れずに言えば、どこかばかばかしい。こんなので死ななければいけなかったことを考えると、身震いする。この館を戦争讃美だとかいう声もあろうが、これを前に讃美もないだろう。讃美とだけ取れる(両面からして)のは、ちいっと鈍感な人間じゃあないだろうか。秤の一方に戦死せざるをえなかった人たちの犠牲を悼み、讃えることがあって、もう一方は彼らがどうしようもなく死んだという事実。これで釣り合い取れてないだろうか。わざわざ他国の犠牲をどっかから持ってくる必要あるんだろうか。それはそれで、もっと大きな秤で釣り合いを取ればいいんじゃないのか。うーん、ようわからん。たとえば俺の中でそう解釈しても、それだけのことだからなあ。
 ただ、思ったのは、もっとピュアで大規模な軍事博物館がどっかにあればいいのにな、と。やはりここは特殊だ。歴史解説はいらねえから、博物として収集するようなところね。この国じゃちょっと難しいかね。
 ……ところで初詣行って、なに見てきたのかね。なんかわからんが。詣でた気持ちが薄いので、どこかへまた行こうっと。でも、おみくじは引いて、おみくじは「吉」だったっけ。