強者の弱み

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/k1/column/200701/at00011997.html
 俺は自分が弱い人間であることを、身にしみて知っている。肉体的にも精神的にも貧弱な坊やだ。だから、何かを見るとき、どうしても弱さに引き寄せて考えてしまう。強者の論理より弱者の言い分。強者の感情より、弱者の情緒。「何もかも弱者が正しい」という意味とは全く違う。どんなに強いものを見ても、その中の弱さ、不幸、絶望を探してしまう、ということだ。
 さて、秋山成勲はどうだろう。俺は、ぬるぬるとは関係なく秋山が嫌いだと書いてきた。いろいろの格闘家の中で、秋山は好きになれないと。その理由は、プロテクトされたマッチメイクというもあるが、マッチメイクで選手を責めにくい。それよりも、そんなマッチメイク上での秋山の戦い方だった。ふるまいだった(id:goldhead:20051013#p1)。畑違いによる実力差のある勝負なんてのは、いくらでもある。そんな中でも、秋山だけはなんとなくいや〜な印象を受けたのだ。これはもちろん、やられる側に感情移入してのことだ。
 で、ここに来て秋山に完全な弱みが出たわけだ。また(柔道時代もたぶんクロでしょ)、ぬるぬるして、それが白日の下に晒された。そこに弱さはあるだろうか。以下のように考えられる。
 「なんだかんだいって、柔道界でも上位一握りに入っていた、あれだけの肉体の持ち主。それですら、滑りに頼らなくてはいけない。ぬるぬるにならなくて、自分の力でどうにかなったかもしれないのに、手を出してしまう。そこに人間の弱さがある。いくら鍛えても去らない恐怖。そんな恐ろしい重圧の中で、潔く覚悟して戦いに臨む男達がいて、それを踏みにじる卑怯者がいる。それが明らかにされた卑怯者は、今後どんな人生を歩むのであろうか」
 ……って、書いていて、全然実感がないのだ。こいつについては。上のリンク先のコメントや会見を読んでも、こいつは弱みを見せてる風にも、自らの卑怯さを恥じる風にも見えない。桜庭和志と、どっちが悪いことをしたのか分からないような態度の大きさだ。こいつは今後も大手を振って生きていくに違いない。これには参った。こんな風に感じさせる人間がいる。恐るべきことだ。こういう人間の方が世間ではうまくやっていけるなんて感じだと、もう俺は絶望してしまう。誰かどうにかしてくれ。HERO'Sなんだから、誰かヒーローが出てきてくれ。幼稚な俺はそんな風に思う。