『唄ひ手冥利〜其ノ壱』椎名林檎

 オリジナルの方は、日本人なら誰もが耳にしたことのあるようなやつで、ひょっとしたらやばいんじゃあないかと思っていたけれど、これほどとは思っていなかった。聴いているとどきどきして、手に汗にぎるくらいだ、「木綿のハンカチーフ」。心臓を揺さぶるような曲。離ればなれになって、次第に離れていく恋人……。グッとくるじゃあないですか。いやはや。いや、これはこのアレンジでこうなのだから、オリジナルの太田裕美バージョンだともっとやばいのか、あるいは俺にはさらにこのアレンジがくるのか、そのあたりはわからない。けどまあ、こういうテーマは椎名林檎オリジナルにも見られる要素で、マッチはしているように思える。
 ……というくらい、「木綿のハンカチーフ」にもっていかれたけれど、たとえば「灰色の瞳」なんてのは意表をつかれた。母が加藤登紀子ファンで、これも口ずさむレパートリーの一つだったものだから、実になじみ深い曲であるのだ。しかも、デュエット相手がスピッツ草野マサムネでこれはおもしろい。あとは、「白い小鳩」というのもちょっとこぶし効かせて面白かったろうか。二枚組のこっち側は、なるほどギター全開でらしさあっていい。
 しかし、もう一枚の方はどうだろうとなると、こちらはどうも面白くない。なんか全編オルガンっぽいのと、鐘と、ノイズに頼りすぎで、雰囲気はあるけど、いまいちだ。
 あと、全般に言えるが、外国語曲はあれだな、発音追うのに一杯で、ぐるんぐるん回る軽快さに欠けるな。こう、もっと日本の名曲、歌謡曲で攻めて欲しかった。野坂昭如とかやってほしかった。まあ、ファンなら買い的な一枚だろうか。一枚組で十分だったとか、そんなところ。
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 本当はCCCDだから敬遠していたザーメンのやつ買おうとしてたけど、買うタイミングで在庫切れになりやがんの、e-bookoff。