『赤目四十八瀧心中未遂』/監督:荒戸源次郎

赤目四十八瀧心中未遂 プレミアム・エディション [DVD]
 ここのところ観た『陽炎座』。そのプロデューサー、荒戸源次郎。ほおずきの女を演じた大楠道代、ともにこの映画に。そして、ここのところ観た『ヴァイブレータ』。主役を演じた大森南朋寺島しのぶ。そんなメンバーが揃っているのがこの映画。観るしかないでしょう、といったところでしょう。
 そしてこれ、この『赤目四十八瀧心中未遂』が一番よかった。車谷長吉、名前となんとなくの知識しか知らないけれども、その私小説的ともいえる原作。社会不適応者の主人公は、流れ流れて、尼ヶ崎。狭く汚いアパートの一室で、モツを串に刺す仕事をする。インテリ崩れin尼ヶ崎。この世捨て感、蒸発感、俺の好きなつげ義春のテイスト。無能の人テイスト。
 その主人公を演じたのは大西滝次郎。えらくかっこいい人なので、名前を見れば誰だか名前くらい知ってる名のある俳優かと思ったら、まったく知らない人だった。これがデビュー作という。そのあたり、『陽炎座』に迷い込んだ松田優作じゃあないけれど、彫り師の内田裕也(すごい怪しい!)だとかヤクザの麿赤児(親子で一緒に映るシーンはなかった)に囲まれ、うろたえる雰囲気や良し。世捨て人のインテリという気取りや余裕いっさいなく、生きるのに精一杯、対応するのに精一杯なところが出ていた。何か言われて「ええっ!?」って驚く台詞が何度かあって、それがやけに生々しかった。「生島さん、頼みがあるんやけど」から始まる、巻き込まれ型コメディみたいなところもあったりして。
 そいでもって、映像と音楽がよかったな。これはもう、しょぼいテレビ画面で見てても感じたわ。あと、車窓とかけっこう映すでしょ。車からだろうと、電車からだろうと、車窓を映す映画は好きなのよ。赤目四十八滝にも行きたくなってしまう。
 つーわけで、ともかく、あとから作品の時間見て驚いた(二時間半超)くらいに没頭できた。エロと狂気とバイオレンスを淡々とまぜこぜにして、まあきっちりパッケージングされてるって感じ。このあたりの作品はもうちょっと辿っていこうっと。