『ステルス』/監督:ロブ・コーエン

ステルス [Blu-ray]
 テレビで開始三十分過ぎから視聴。あんまりこの手のハリウッド映画は観ない……のだけれど、新しいテレビによる、俺にとっては十分な迫力映像、そして最近エースコンバットシリーズをプレイしたという二点が絡み合って≪メビウス1・エンゲージ!》と相成った。
 それでもう、脳味噌空っぽにして見ていたのだけれど、あれだね、空中給油飛行船のシーンは素晴らしすぎた。あの天空無人船の感じは、なんとも言えずSFでありファンタジーだ。ファイナルファンタジーだ。あと、宮崎駿松本零士ですらある。それが空にガスの輪を描いてぼわわわわドカーンって、もう、最高!
 ……って、そりゃああれだ、エディさん(この映画の肝である人工知能なのだけれど、ずっと「コンビニで買い物便利そうな名前だな」って思ってた)が給油口破壊という荒技すぎる荒技を使ったところに突っ込もうと思えば突っ込めると思う。「人形使い」的にネットワークに繋がってるんなら、無人飛行船くらいクラッキングしろよ、とかなんとか。でも、それじゃあぐるぐるどかーんができないんだよな。それでもって、「それも考慮したけど、破壊の方が早かった」って描写を挟もうにも、そんなモタモタやってる時間はねえんだ! 士郎正宗みたいに欄外で説明するわけにもいかねえ! ともかく、見せたいのはガスの輪と爆発、そのファンタスティックなんだ! って、その心意気やよし!
 というのが全編に渡って続くというところ。だいたい、ロシアに領空侵犯してSu-37とのバトル、普通だったら≪こちらは空中管制機オーカ・ニエーバ。君たちの言葉で空の眼『スカイ・アイ』という意味だ≫ってなって、協働でポンコツ機械野郎と戦うのが筋じゃねえの? みたいな。つーか、いいねえ、Su-37、付け焼き刃の知識で、「コブラやれ、プガチョフ・コブラ!」とか手に汗握ってしまった。結果、神の謎機動でステルスの勝ち! つーか、ステルスなんだから簡単に発見されるな、あと、二次大戦みたいなドッグファイトするな、どっちも……。
参考:プガチョフ・コブラ

 あとはえーと、女の飛行機からベイルアウトしてからの嫌すぎる実況中継。おおよそパラシュートと関係なく一生を過ごす人でも、一度は必ず想像するであろう、落下中トラブルの恐怖、それを執拗に描くすさまじさ。高所恐怖症もあって、うわー思いながら目が釘付け。あんなん聞いたらトラウマになるわ。そう、死に行く人の実況というのは、恐ろしく、悲しい。こんな映画から引き合いに出すのもなんだけれど、日航機墜落の通信記録、あるいは、偽書であったと思うけれど、爆発するスペースシャトルからの通信などなど。まあ、結局助かるわけだけれど、このシーンもくるものがあった。
 で、落ちた先の北朝鮮、この映画に限っては北朝鮮もいい迷惑と同情。あんなマッチョで筋骨隆々の兵士達がいるのかどうか知らんし、ゴルゴ並みの狙撃……って、なんか映画変わってるし、いや、≪ナガセ大尉を連れ帰れ。 彼女をこの上二階級特進させるな。≫って感じかと思いきや、急にスティーブン・セガールになったりと、まあ詰め込みすぎというか、もっと空戦やれというか、『マクロスプラス』的に人間対機械の限界の戦いやれというか、そこら辺はちょっと食い足りない。つーか、対露、対北でここまで大騒ぎして、なんかなんだこのありきたり大団円。そもそも、機械に戦争をさせることに関するテーマはどうなった……って、テーマとかなんだそれ、そんなんどうでもいいじゃん、いや、しかし。
 というわけで、なんかもう、限りなく素晴らしく、限りなくアホ。どう評価していいかわからない。もし百点満点で採点せよなどと言われたら、困ってしまう。でも、好きか嫌いで言えば、生理的に好き。全部に優れた映画なんて無い物ねだりだぜ、だったらあの天空のファンタスティカ、それで十分だ。
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