石井琢朗がカープに来るのは何の花にたとえられましょう?

 あたし、やさぐれたバーのママなんです。幾人もの男たちが、成功するとともにあたしを捨てて逃げていったんです。今じゃ店も気心の知れた常連だけで、ときどきすてきな外人の人も愛してくれるんだけれど、やっぱり別れは早いんです。あたし、このまま人生に張り合いもないまま、お年寄りになっちゃうんじゃないかって、不安に、なるんです。
 でも、あたし、このところ流れ、変わってきたみたい。ずっと辛く当たってきた子が、ずっと一緒に居てくれるって言ってくれるし、とびっきりの色男が、恋してくれるって言ってくれたんです来年にはお店も新しくなるし、もっと頑張っちゃおう、て思うんです。
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 ……などと意味もなく宇能鴻一郎先生風になってしまったりするくらい、かなり石井琢の加入には気が動転している。昨日も動揺したけど、今日も同様である。他球団ファンの人にはわかりにくいかもしれないが、これはカープにとって滅多にないことなのだ。主力選手が出ていくことはさんざん見てきたが、他球団の主力級選手が入ってくることなど、ぜんぜんないのだ。福井や赤松といった実績の選手が来るだけでも、かなり刺激的に感じるくらいなのだ。
 そこにきて、横浜ベイスターズの顔であり、二千本安打の石井琢朗である。正直言って、カープのユニフォーム姿が想像できない(からいい加減に合成したりしたんだけど。ユニだけで言えば、ヤクルトとか中日とかオリックスとか、青系の方が似合いそうだ、今のところはな!)、そういう選手だ。もちろん、客観的に見て、今バリバリの超主力級というわけではない。最下位チームを戦力外になったという、意地悪な表現もできるだろう。しかし、やはりこのクラスの選手というと、数字に表れるばかりのことではないだろう。
 別に実務的にコーチの仕事を期待するわけではない。ただ、薫育のように、その存在によって若い内野陣を引っ張っていってもらいたいのだ。ともかく、これはとてもとても俺にとって大きいニュースだ。また、広島がこういった選手にアプローチするという姿勢を評価したいのだ。若返りばかりがチームの革新ではないのだ。
 というわけで、今朝もベイファン「よりによって広島とはショック」などと失礼なことを言われたりしたが、いや、ともかくありがとう横浜。お礼を言う筋合いではないが、あえて言わせてもらう。そしてありがとう石井琢朗カープに欠けているかもしらん、色気を持った選手だと思う。高橋慶彦のことなど思い出す。一日も早く、赤ヘルかぶった石井選手が見たい。ハマスタで見たい。在関東カープファン二世(広島の方には、たとえばブラジルの日系移民二世のようなものだとお考えいただきたい。私は広島の地に足を踏み入れたことすらないのだ)として、この移籍は、あまりに大きいのだ。