永田さん、ひどかったな、俺は。

 偽のメールをもとに国会で質問した責任をとって辞職した民主党永田寿康衆議院議員が、先週、福岡県内で自殺を図っていたことがわかりました。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn/20081118/20081118-00000053-jnn-pol.html

 「偽メール」が肩書きになってしまった永田元議員。彼が話題になったのはいつのころだったか? 2006年の2月21日の俺の日記には、次のような記述があった。

吉田勝己氏、亜G1馬カーソラを購入

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20060221

 ああ、そうだ、カーソラ。どうなったんだ、カーソラ? アルゼンチンの名牝だ。検索してみると、どうも‘Cursora’は‘クルソラ’という読み方になっているようだった。

Fusaichi Pegasus(USA) クルソラ(ARG) 494 牡鹿 40950000 大阪府(株)ダノックス

http://www.jbis.or.jp/seri/a020200810H1.htm

 ダノンの人はつくづく異流血統好きだなぁ。金持ちはこうでなくってはいけない。しかし、フサイチペガサスの馬主だった関口房朗は大丈夫なのだろうか? 少し気になる。
 続いて、2006年2月24日だ。

 「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「食わず嫌い王決定戦」に(長いな)、伊藤淳史が出ていたので思わず見てしまった。何せ伊藤淳史である。

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20060224

 伊藤淳史を‘元チビノリダー’として珍しがっている。今や、テレビをつければどっかに出ているという売れっ子っぷりなので、隔世の感がある。チビノリダーからの隔世があり、また隔世がある。とはいえ、wikipedia:伊藤淳史を見るに、2006年2月の時点でまだチビノリダーを引きずっているというのは、少し遅かったのかもしれない。
 さらに、2006年3月1日。

 「事務所」の前で赤色燈の回転、サイレンなくがなるスピーカ。俺イヤホン外して道の向こう側。ハザード点滅させてゆっくりゆっくり赤色燈ワゴン発進。スピーカから呼びかける声「ただいま四歳の女の子を迷子として保護しております。ご両親はお近くの警察官まで声をおかけください」……。小雨の底の寿町、深海を巡航する深海魚。同じ文句呼びかけて年配の警察官、呼びかけて若い警察官、呼びかけて年輩の警察官。赤色燈光らす深海魚の一匹パレード、左折して潜り込むは寿町のコアへ、ドヤの中核へ。君、こんな雨の日の寿町で子どもを捨てない方がいい。

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20060301

 この光景は今でも覚えている。小説に見られる陳腐な比喩、雨の街と海の底。そんな中、みた情景だった。あの子はもう6歳になっているのだろう。どこでどうしているのだろう。誰だったのだろう?
 また、2日後の2006年3月3日。

 まずは広末。誰に聞かれたわけではないけれど、あえて主張しておきたい、今のヒロスエがいいヒロスエだ、と。

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20060301#p4

 広末涼子についてこう語っている。出始めのころより、結婚、妊娠、出産を経た今の方がいいと。あれからさらに時は過ぎた。離婚の二文字が加わった。さあどうだろうか、ますますいいですねの荒波は押し寄せていると言わざるをえない。広末はさらによくなっていて、俺は変わらない。
 ……
 ………などと永田さんのことから目を背けてはいけない。ナガタロックして過去の自分に向き合わねばならん。

ワイドショーやネット上に飛び交う話を見ているだけで楽しい(誰かが破滅する話は好きだ。中途半端に終わったら落胆する)。

今回の堀江メール問題の顛末には、正直落胆した。爆弾がどこでもいいから爆発すればいいくらいに思っていたが、あまりにも予想通りというか、単純なところで爆発して終わりという具合。いや、「永田寿康入院」というちゃちな筋書きで鎮火を試みているところか。

 永田寿康の会見は見ものだった。彼にとって最悪に面白くない会見。どうあがいても起死回生のどんでん返し(「皆さまに嘘をついていたことをお詫びします。入院と見せかけて実は、香港に飛んで証拠を集めていたのです! これをご覧ください!」)などあるわけもなく、彼の手札は「敗戦処理」の一枚のみ。彼はオダギリジョーでなく劇団ひとりにすぎない。

俺は爆弾で誰か吹っ飛ぶのが見たかった。

 そして最後、最後に永田元議員の消息が載った週刊文春についてのメモだ。

まあ、実家が金持ちだから、働かなくたって暮らしていけるんだろう。うらやましい。

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20060811#p2

 ……なんというか、まあ、意地悪だね。攻撃的だね。性根が曲がっているね。腐臭を放っているね、俺は。心に余裕がなかったのだな。だいたいともかく、金持ちは憎い、うらやましい、少し分けてくれ、さもなきゃくたばれ、という、そういう心情に塗りつぶされていた。
 今は、ここまでの憎悪はなくなったと言える。理由はなぜか。暮らし向きがよくなったからか? それは断じて違う。収入と呼べるかどうかわからんほどの収入は、横ばいか右肩下がりだ。馬齢を重ねて、積み重なる人生経験というものもなく、ただただ未来が狭まっていくだけだ。頭打ちだ。つぶしが利かなくなっていく、それだけだ。
 なのになぜ、余裕らしきものができたのか。よくわからない。貧困に慣れて、鈍感になってきたのか。仏教本にかぶれたせいか(考えてみれば、俺は仏教に対して「本を買って読む」、「読んで勝手に解釈した妄想を日記で垂れ流す」、「夢を見る」の三点でしか接していない。ゆえにこの表現)。それとも、何かしらのケミカル(合法です)な事情によるものか。それはわからん。わからんが、それら総体の俺が仮和合して今、ここの俺が、たまたまいるというだけのことである。憤怒の地獄に溺れる自分も万馬券当てて世界王者気分の俺も、一瞬一瞬の輪廻と転生にすぎない。かりそめの赤肉を、自我を、そんなにたいそうなものと思うこと、信じることはない。俺の世界も、世界の俺も、そもそも汚れたり綺麗になったり、増えたり減ったりすることはないのだ。阿留辺幾夜宇和のままに生きればいい。その時にそのように感じた俺の心持ちなど身びいきに迷わされた虚ろなもの。だが、その妄念に次ぐ妄念がそれを確かなもののようにさせていく。憎しみは自然に生まれたもの、自然な自分の感情などではない。そう思いたがってそう思っている。縛られた方が楽かも知れないと考えて、そうしているにすぎないのだ。

已起のものは続ぐなかれ、未起のものは放起するを要せざれ

http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20070411#p3

 だ。……などと、話が抹香臭く、気違いじみてくるのはこのあたりか。2007年4月。このあたりでどうも、何かかわっているのかもしれない。攻撃性を放棄したところで、なんということもなく、金持ちにムカムカしているくらいなら、ムカムカしない方がいい、という、変なトートロジー的な、妙なところに落ちついてきたのだ。
 むろん、だからといって俺が聖人のようになったということはない。口から出てくる(ここに書く、ではない)罵詈雑言嫌味皮肉の類は昔と変わらないし、憎悪で視界が真っ赤になったり、欲望で世界がピンク色になったりする。そして言うまでもなく、いつでも不安でいっぱいだ。でも、だからなんだ、2年前とは違うのだ。何かが違うのだ。全部どうでもいいとも言える。それは何だ。向上心なんて元からなかった。貧困に隷従しているだけか? 内なる反革命に負けた、敗北主義者か? なんとでもいえばいい、赤の手先のおフェラ豚め。
 と、俺の2年とはこんな感じだったよ、永田さん。あんたがどうだったかは知らないが、俺はこうだったんだ。じゃあ、俺はグエン・トラン・フォク・アンが今どうしているのか、ネットを探してみるよ。それじゃあ。