『ブラッドハーレーの馬車』/沙村広明

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)
 ブックオフの少女漫画&ボーイズラブコーナーが三冊百円だったので物色していると、なぜか場違いな「沙村広明」の名が。手にとってパラパラめくってみるに、少女漫画風なのだろうかどうか、とりあえず買うことにした。『無限の住人』は好きだったが、ほかは読んだことなかったっけ、というところ。
 で、例によってこの作者はこうだった、と読みながら思い出した。ギリギリと後味の悪いところをえぐく描いてくれること、くれること。でも、くそったれのどん底地獄で、隣の部屋の少女と話す、あのシーンとかはいいけどさ。それで、なんでパラパラめくって気づかなかったかというと、そういう直接的なシーンは最初の方だけで、あとは行く末をにおわすだけなのよ。これが逆にね、くるね、ほんと。
 まあそれで、やっぱり、俺、こういうの苦手、というところを再発見した。寝取られ好きという精神的ドMなんだけれども、肉体的なSM、さらにその進化形(神隠し殺人みてえな)、これはちょっと性的興味の範疇外となる。中学生のころから調子に乗って澁澤龍彦訳のサドとか読んでいたけれども、やーっぱりあんまり性的な意味で好きになれない。
 と、性的な意味で好きになれないからといって、「読みたくない」というほどでもないというか。むしろ、「この沙村の描いているレベルは、エロのパワーとしては百万くらいかもしれないのに、俺の方向性と一致していない!」という、その壁一枚、あるいは山一つ分の差にモヤモヤするというかなんというか。まあ、ともかく、スパンキングくらいならいいけれども、もいだり、えぐったりはちょっと困る、と。でも、「うへぇ」とか言いながら読むにはなんとかなる、と。
 ところで、この話の筋、孤児院から毎年一人美しい少女が伯爵家の養女にもらわれていき、歌劇団の女優になれるということなのだが、実は……、という筋。ひとつの映画を思い出していた。『エコール』だ。
エコール [DVD]
 こっちはロリコン映画として名を馳せたかどうかわからんが、そういう映画だ。これを観て俺は、「これがある種のロリコンの方向性の果てだとしてたら、俺はその種のロリコンではない」と思ったのだ。少なくとも、「これがロリの百万パワーか!」というところもなかったし、「映画としてすごい!」ということもなかった。正直、ちょっと観て損したと思った(女の子がどれも好みでなかった、とかいうのは内緒にしておこう)。でも、今回『ブラッドハーレー』読んで、ちょっと思い出したりした。そんなところで。