世界の終わりとDTP WORLDワンダーランド

平素は弊社の雑誌『DTPWORLD』をご愛読いただきまして誠に有り難うございます。
1996年の創刊より、読者の皆様に親しまれておりました『DTPWORLD』ですが、誠に勝手ながら、2009年4月13日発売131号(2009年5月号)をもちまして、休刊することとなりました。
創刊から13年間、読者の皆様に支えていただき心より御礼申し上げます。

DTPWORLD休刊のお知らせ|ボーンデジタル

 まずはじめに断っておくと、自分がDTP世界の住人かどうかというと、非常にあやしい。毎日IllustratorPhotoshopIndesignDreamWeaverで仕事をしているけれども、たとえばデザインの学校に通ったこともないし、まともな教育を受けたこともない。また、アマチュアとして趣味が高じて、などというわけでもない。気づいたらこんなことになっていた、よくわからないが、なにかおそろしいものの片鱗を味わって、DTPと辛うじて名のつく末端の席にいた、というだけだ。
 だが、そんな人間でも雑誌「DTP WORLD」くらいは知っている。職場が定期購読していたので。それを毎号読んで、少しでも知識をつけようと頑張って……こなかった。はっきり言って、ほとんど読んでいませんでした。ハイクラスの商業印刷やおしゃれデザイナー、かっちょええデザイン世界とは無縁なので。どちらかというと、「ケッ」という感じ。
 では、職場の方々は……というと、届けられると包みを解いて、「へー、CS4出たんだー」とか言って棚に直行という感じ。なんというか、この、三流出版、印刷現場のグルーヴ感がねえよ。場末の臨場感がねえよ……って、お門違いですか。そうですか。つーか、つねづね、「DTPWORLD-下流」みてえな雑誌があればいいな、と。もう、しょうもないクライアントのしょうもない提供データをどうするかとか、よその三流会社が作ったクソまみれの.aiファイルをどうするかとか、修正シールの効率的な貼り方はどんなのだとか、役人から「○○を■■■■して」って言われたとき、どうするかとか……。いや、そんなのはてめえで考えろということか。
 と、まあ、それはともかくとして、しかし、やっぱりネットというものがある。ツール、アプリケーション、プラグイン、素材、トラブルへの対処……これらはもうネットの方が早い、安い、便利。ピンポイントで得られる。大局的なデザイン方針とか、真のデザインの追求とか、革新的な発想とかとはほとんど無縁の世界からすれば、ルーチンワークと場当たり主義がほとんどであって、まあネットは便利よね、みてえな。それに、入稿ルールとかも、まあツーカーの印刷屋とのツーとカーもあるし、うちはそれなりにまともな部類だと、たまによそのデータを覗くと感じるのよね。
 ……って、ようわからん、ようわからんが、DTPWORLDやその他高級デザイン誌の内容を、真に必要とするこの業界の人間の割合というのは、どの程度のものなのだろうか。これはかなり書いていて、もうブラウザ閉じたくなる。「ネットには技術も収入も意識も高い人たちが多いから、うっかり底の方の人間がなんか書いたりしないのが無難か。くわばらくわばら。」って、こないだなんか自分で書いていた通りだ。
 ま、でも、もうDTPWORLDも終わるのだし、今朝届いた今月の特集は「コスト削減」なのだし、そのくらいは腹を割っておこう。腹を割ろうというか、切腹というか、まあ知らねえけどさ。

昨今、広告依存型のビジネスモデルの転換期に来ておりますが、弊社としましてもメディアとしての長期的戦略の観点から、他の媒体や事業に経営資源を集中することにより、更なる顧客価値の向上、経営効率の改善を図る所存でございます。

DTPWORLD休刊のお知らせ|ボーンデジタル

 って話でさ、まあたぶん、広告が足りないって、そういうことであって、DTPWORLDの広告っていったら、農耕機具だとかペットフードだとか投資信託だとかなわけではなく、この業界のものであって、この業界に金が無くなっているということであって、その点において、まあなんというかワールズエンド・スーパーノヴァだと。
 つーかね、正直ね、やっぱりね、なんだかんだいって雑誌が死ぬというのは悲しいよ。これは悲しい。縁のない雑誌でもちょっぴり悲しいけど、なんだかんだいって、毎号パラパラめくっていた雑誌だと悲しいよ。けど、この悲しみは、明日の我が身。なんつーかさ、どんどん紙媒体の仕事って減ってて、安くなって、みんなWEBってことでさ。さすがにWEB専業ってのは無理だ。
 だからもう、俺ははっきり言って、余生を生きているつもりだし、もうこれが終われば、まったく別の世界、別の底に横滑りするつもりなんだ。そのとき、「ちょっとIllustratorPhotoshopを使えるかも知れません。とりあえず入稿して大丈夫なデータは作れます。でも、デザインの勉強したこともないし、向上心もないです。Indesignもデータ修正くらいならできます。Webに関してはなんとなくHTMLとCSSの仕組みについてはわかっていますが、一から作ることはできません。デザインはできません。CGIの設置はできますが、一から作ることはできません。jQueryとかいうのも、なんか動いたりすることがあるけど、たまたまです。Flashも、なんかバナー動かすくらいはできますけど、クリックしてどうこうとか言われたら無理。日本語はなんとかなるかもしれません」なんていうしょうもなく中途半端未満な技術などは役に立たないだろうから、なんというか、真っさらな俺なんだ。真っさらな俺が、底でまた場当たりするんだ。まあ、それでいいじゃねえか、と思っています。それでは、さようなら。

関連______________________

  • 萌える電脳都市はクリッピングパスの夢を見るか?……中国DTPや切り抜き屋の話が出ている。これから4年後、つまりはこないだ大量に切り抜き注文した(このリンク先の業者かはわからん)。したら、なんとまあ中国どころかヴィエトナムに進出していて、作業スケジュールがヴィエトナムの旧正月と関わる、みてえな、もう世界は一つだね。いやはや。
  • Mac使ってる人って何なの?……なんとなくWindowsをそれほど使ったことがない、プライベートのパソコンを持っていない、というのは、かなりこのご時世マイナスなのでは、と思わないでもない。イラレいじれるより、Excelで関数とかマクロ? とかできた方がモテるだろ、たぶん。
  • 底知れぬ色調補正……この日記でDTPと検索すると、こんな話しか出てこない。
  • いい話なのかなんだかわからないが……たとえば、たまに見たOSXへの移行なんてもんは、自分らもずいぶん遅れたと思っていたが、なんか真ん中くらいか、みてえな。そりゃ、「旧環境ですごい金かけて一流の機材と作業工程作りあげたから、このクオリティを保つためにはまだ移行は無理です」って話もあるだろうけど、果たしてそればかりかね、と。