若松孝二『情事の履歴書』を見たのこと

情事の履歴書 [DVD]

情事の履歴書 [DVD]

"ピンクの巨匠"若松孝二監督作品、遂に登場!女の生き樣を描きながら、後の反権力・反体制というテーマへの萌芽が見られる記念碑的作品。東北の寒村で育った純情な娘、加代。雪の中でチンピラに乱暴され村を飛び出すが、売春宿や裁縫工場など行く先々で男達に翻弄される。やがて加代の心の中で復讐の炎が燃え盛り、男達を抹殺する計画を実行に移した・・・

 『17歳の風景』がおもしろかったので、時代を一気にさかのぼって1965年の『情事の履歴書』。はじめはなんとなくミステリ的ななにかと思いながらも、だんだんと女の身の上があばかれていき……、そっからだな。あの、なんだ、学生運動のやつが、女に対して「自分たちの真の敵は国でも権力でもなく君らのようなブルジョアだ!」みてえにディスるんだけれども、その実、大学生なんてめぐまれた身分のやつがに比べたら、この女の方がどんだけあれなんだよって話であって、そのあたりの皮肉さを描くところが、ようわからんが、ひょっとしたら、この監督の学生運動への距離感なのかな、みたいなところは感じたりした。あと、それまで、いやらしい官らしさを発揮しつつも、ある程度のラインを守ってきた刑事が、最後の最後に爆発して、「汚れた体で!」ってののしるわけじゃん。そこのところのさ、すごい感じに世間とか男とかそのあたりを暴いたな、みたいな。それで、女がチキンライスについてこう言うわけじゃん。

食べなきゃ食っていけないじゃないか
だから食ってやったんだ

 ここんところしびれたな。いや、我ながら何を書いているのかようわからんが、そういうところなんだ、この、藪の中、みたいになるところのさ。加害者と被害者、その被害者に対する抑圧というか、そこんところをさ、なあ。なるほど、ピンク映画の黒澤明かというか、俺、黒澤明もろくに観たことがないと告白せざるをえない。そうだ、DVDの特典で、また切通理作による若松孝二足立正生のインタビューというか、そういうものが入っていて、一年に一度、若松が撮った映画を、レバノンの軍事キャンプにさ、足立を訪ねてビデオ持って行って、感想聞いてたとかそんなん話しててすげえなって思った。


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