- 作者: 関屋敏隆
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1984/05/25
- メディア: 大型本
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ぼく、ゴン太。
北海道生まれ。島崎さんという、おかしな大学生が、牧場にあらわれて、ぼくを買いたいというんだ。北海道から九州まで、馬に乗って旅をするんだって。
友だちと別れるのはつらいけど、日本中を見物して歩くのも、わるくないなあ……。ぼくは大はりきりで、島崎さんを背中に乗せて、出発したんだ。
鹿児島って、とおいんだろうなあ。いったい、何日かかるんだろう。
暗い夜の津軽海峡、さみしかったなあ。母さん、父さん、さようなら!
(↑本は総ルビ)
自分は、あまり絵本の記憶がない……と思っていた。わりかし早く字をおぼえたが、関心の先は漫画であって、藤子不二夫や東海林さだおやいしいひさいちを読みあさったものだった。そしてすぐに同時代の児童向け漫画、コロコロにボンボンに出会った。絵本はどこかにおいやられていた。
が、しかし、やっぱり絵本もあったんだ。いくつかのすばらしい絵本。物語との出会い、言葉との出会い、絵との出会い。その中のひとつ、かなりのお気に入りのひとつがこの絵本だった。
絵本としては珍しいのかどうか、実話ベースのお話だ。ただ、馬目線。そこがいいんだな。それで、北海道から九州まで、旅をする、その旅風景のうつくしさ。どこか非現実的でありながらも、やはり同時代の日本であって、うすぼんやりと思い描く、どこか遠い町のこと。
なんかいいよね、この色づかい。とても好き。かなり強烈だ。
そして、単に日本各地の絵、ではないのがいいんだ。旅日記なんだな。道中、どこそこのトンネルは通れないから船を選んだとか、箱根越えは難関だったとか、ね。そして、この蹄鉄の場面なんかも。たぶん、馬が蹄鉄をはくなんて話は、この絵本で知ったんじゃないのかな。
……うーん、ちょっと旅に出たくなる。まあ、馬というわけにはいかない。そういや、版画と文を手がけた作者が、あとがきにこんなことを書いていた。
彼の体験記『二六〇〇キロ 猛烈乗馬旅行記』を読んでから、いつかこれを絵本にしてみたいというのが、旅を描き続けてきた私の夢となった。
ついに思いたち、83年夏、馬ならぬ自転車にまたがり、取材をかねて、彼と相棒ゴン太君の足跡をたどってみた。あらためて彼の忍耐力に驚かされた。
って、こっちも驚かされるわ。「たどってみた」て。まあ、このあたりの体験というか、そのあたりが、この『旅日記』の絵本の、「旅」部分のリアリティみたいなものをガシッと支えてんのかもな。しらんけれども。あと、上の左上のコマ、左側から来てる自転車が、作中にひょっこり顔を出している作者。こういう遊びは好き。
というわけで、なんかひょっとしたら、追憶と感傷、また絵本の記憶をたどることもあるかもしれない。おしまい。