おまえの耳穴の大きさ

 iPodにつないでいたイヤホンをなくした。いや、探せば出てくるだろう。ただ、なんとなくイヤホンを買いたくなることもある。
 売り場ではどいつもこいつもカナル型だ。なかにはアナル型イヤホンがひとつくらい混じってるんじゃないかと思ったが、そういうこともない。
 俺は昔、一個カナル型イヤホンを買ったことがあった。これが、耳に入らないのだな。付属してた一番小さいサイズでも、入らない。まったく参ってしまう。
 というわけで、俺は今回も少ない選択肢から普通のイヤホンを買う(この「普通の」も一種のレトロニムだろう)つもりだった。
 が、ためしにひとつカナル型のパッケージを手にとると、「耳の小さい方のためにXSサイズを同梱」とある。いたんだ、耳の小さいやつ。
 俺はカナル型イヤホンを買うことにした。……さきほどから「カナル型」と打つたびに、俺がどれだけ「アナル型」と入れたいか、お前にはわかるまい。
 そして、お前にはわかるまい、耳穴の小さい人間の苦悩を。XSでもぎりぎりじゃないか。耳に突っ込んだところで、聴こえてくるよドクンドクン、血管だか心臓だかの圧迫音。
 しかし、音を鳴らせばまあなかなかの重低音。安物にしては上々。とはいえ、この世界との遮蔽感はなかなかのリスク。そんなふうに思う。
 自分の耳穴の大きさ。そんなものを気にする機会がある。いつしか、ある何かが普及したあかつきには、左足の薬指と小指の間隔がものすごく重要になるかもしれない。俺はそんな日を夢見る。アナル型イヤホン、アナル型イヤホン、アナル型イヤホン。

wikipedia:耳穴
 ↑おまえがいったい何を言ってるのかさっぱりわからない。