カープファンには流せる涙もない!


 俺はカープファンだ。いや、カープファンではない。なんといっていいのかよくわからない。
 俺は広島で生まれてもいないし、育ってもいない。広島市民球場をこの目で見たこともない。ただ、俺は物心ついたときからカープファンだった。広島出身の父、あるいは父の母であるところの祖母から仕込まれた。
 が、もう仕込まれたもなにもない。誰かから言われたわけでもなく、俺はカープファンとして在ったのだし、これからも在るだろう。ただ、このような在り方が「ファン」と呼べるかどうかはわからない。なにせ俺は一年に一度もスタジアムで野球を見ない。横浜スタジアムは目と鼻の先にあるというに。あるいは、スカパー!などに加入して中継を見ようとも思わない。こんなのが「ファン」を名のるはおこがましい。たとえ通販で買ったヒューバーのサインボールを持っていてもだ。
 というか、俺は長く長く続く低迷にもううんざりしているし、新井貴浩がチームを去ったことでものすごく心が冷えて、それも引きずっている。とはいえ、カープのことは気になる。毎日、中国新聞RCC掲示板と2chをチェックしている。が、そんなのがファンか? たぶん違う。でも、もう血肉のようなものなんだ。俺のルーツは広島にあるんだ、たぶん。
 で、松田元オーナーのこの発言どうだろうか? こんなのを見るとカッとなる。

「(野村謙二郎監督は)1年目なんだから、すべてが経験。最下位になってもいいぐらいなんだ。日々、新たに気持ちを切り替えてやってほしい」

http://sports.yahoo.co.jp/news/20100801-00000020-spnavi-base.html

 べつにこれをして「敗退行為に値する!」とか言うつもりはない。正直、「最下位になってもいい」だけ切り出しすぎて見てしまっている、という気もする。言葉尻、揚げ足取り。
 ……だけどねえ、今の状況下でこれはねえだろ。今の、というか、ここ十何年の状況下で、だ。いったい何年「すべてが経験」なんだ。いつになったら経験をもとに強くなるんだ! この終わらない五カ年計画! 完成しない横浜駅! 悪夢!
 だいたいよ、おまえはというか、おまえら松田家はカープが存続さえしてりゃ安泰だろうが、まったく、くそ、いまだに「市民球団」とかマスコミが呼ぶな馬鹿が、松田の家のもんだろが。
 そりゃ、独立採算でやってるのはエラい。というか、プロスポーツとしてまっとうだ。だけど、なんかこうなるとよ、変な話だが、オーナー企業があるほうがマシに見えてくる。持ってるチームがクソ醜態さらし続けて、客もいなくなったりして、悪いイメージがつきそうになったりしたら、おまえ、持ってる意味ないから(……そうでもなかったところにプロ野球の問題もあるかもしらんが)、球団社長なりGM(あんまりいないか)の首をすげ替えて、立てなおそうとするだろ。競争原理っつーのかなんというのか。
 ところが、おまえ、カープの場合は、オーナー企業いねえし、マツダも関係ねーポジションだし、この現場介入する松田元の首を飛ばせねー。伍子胥みてーに自分の首飛ばさねーだろ? もし松田家がダメージくらって退散するとしたら、赤字で球団倒産とか売却とかいうレベル。
 そんで、ここのところがさ、なんつーか、ムカつくけど、じゃあ、広島が広島離れて、あるいはカープという名前が消滅して、それでも応援するの? みたいなところがあんじゃん。いや、俺は在関東二世ファンだから、広島の人の心境は推し量れないけどさ、どうなんよ? そうなると、「球団存続が使命」みてえな、このオーナーの姿勢を完全否定はできねーみてえな。
 ただ、おまえ、人間の限られた時間の中で、くそ、うまく言えないが、それでいいのか? プロ野球団の価値が、使命が、存続でいいのか? 勝たなきゃダメだろ! 勝てよ! 『マネー・ボール』が入場者数だか球団の収入だかは、そのチームの勝利以外の何ものとも相関関係にない、みたいなこと言ってたけど、まあ、それもあるにしても、やっぱり勝つこと、優勝することだろが!
 なんつーのか、その「それを言っちゃおしまいよ」というか、口に出しちゃいけねえことがあって、少なくともオーナーが「最下位でもいいんだ」はねえだろ。そりゃ、ファン、というか、少なくとも俺は「いっそのこと最下位になって一からやり直せ」とか思うことも多い。いや、やっぱりそういう言葉もネットでよく見かける。オーナーの今回の発言のほうが、まだ前向きかもしれない……いや、しれなくもねえというか、なんというか、しかし、しかしなんだ、やっぱり立場が違うだろよ!
 ああ、しかし、まったく、最下位になったりして、そうなっても、オーナーが変わらんことには、少なくとも今のオーナーの球団への関わり方が変わらんことには、ゼロからでも一からでもないというか。つーか、野村謙二郎の首切ったところで、次も似たような選び方すんだろうし、それまでだ。
 つーか、ブラウンは今思うとよくやった。少ない戦力、頼りなくて脆い駒をなんとかだましだまし使って、シーズン通してなんとかもたせて、運良けば三着→短期決戦みたいな。それって、後ろ向きかもしらんが、弱者が強者を打ち負かすためのK.U.F.Uがあんじゃん、たぶん。でも、ブラウンがそうやって改善した部分も根こそぎぶっ壊れた。あるいはぶっ壊された。
 ああ、いったい、どこに出口があんだかさっぱりわかんねーし。はっきり言って、制度その他、もう広島を取り巻く状況は、これはちょっと同情したくなるほどのもんだ。それは認める。認めざるを得ない。だからといって、オーナーの保身ショーはみたくないし、そんなものを気にかける俺が馬鹿みたいだ。勘弁してくれ。だったらファンをやめろ? やめられるんならやめとるわ。
 あー、まあともかく、なんだ、せめて、マエケンだけは壊さないでくれ。あれは野球に愛された子だって、誰か対戦相手のプロがいうほどの選手だ。たまにしか見ない俺にもそう映る。だから、せめて、それだけはなんとか、というのも、また、敗北主義的なのかもしれないが、しかし、これはちょっと本当の声として、最後に。

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 くそ、2004年、この日記の最古のころから同じことを書いてる!