着る毛布は人間をだめにする。俺はだめになっているので着る資格がある。

今週のお題「寒さに負けない方法」

 俺は昨年末引っ越したのだ。エピソード満載の引っ越しだ。だから、俺がほんとうに書きたいのは、前のすみかについての感傷的なお別れの記事であったり、引っ越しの中でのできごとであったり、新しいすみかについてのことなのだけれども、敷金返還のことが引っかかって書く気がしなくなっている。
 ただ、ひとつ新しいすみかについて記しておくとすれば、ひどく寒い部屋だということだ。前のすみかは真冬でも遮ることのない西日が直射すると、なにもしなくても室温が28度になったりしたものだが、今度は違う。斜面にへばりついてて、周りを階段とほかのアパートや一軒家に囲まれた、半地下のような場所だ。窓の数は増えたが、西日どころか東西南北どこからもいまいち光が入ってこない。おまけに、今度はフローリングである。今年の冬は寒いほうだと思うが、それにしてもこれはないだろう、という寒さだ。
 というわけで、このままでは本当に危ないということで、シャワーフックと同じくらいの決断でポチったのが、着る毛布である。去年あたりから見かけていたか、とくに節電などと言われるようになった今年になって目にすることの増えたあれだ。
 して、その効果というとまったくもって悪くない。「普通の毛布をかぶっているのと同じでは?」というような気もしたが、やはり袖があるというのが大違いだ。袖に腕を通してしまえば、なんとなくうまい具合に身体を覆うようになって、その密着度というのが癖になる。袖というのは偉大な発明だし、袖を発明したやつに10ポイントくれてやろうと思う。着る毛布じゃないぞ、人類史上で袖を発明したやつにだ。俺が10ポイントくれてやるのは、並大抵のことではない。


 ただ、俺の買ったこれについて不満を言えば、上の方にボタンが一個ついているのだが、もっとついていてもいいような気がする。七つくらいボタンをつけすぎることで全てを恋で染めることになってしまうと、毛布的自由さがなくなるのかもしれないが、それでも一個というのはあまり役に立たん。だいたいモフモフの中にボタン穴が隠れて留めるのも億劫だ。
 あと、これを着たまま、さらに布団に入り込むことはオススメしない。暑すぎることと、毛布のマイクロファイバーとの引っ掛かりで、クソ寒い部屋の明け方、やけにはだけた姿で冷たくなった姿で俺が発見されてしまう。寝る前は脱ぐべき。
 というわけで、部屋の中であやしげな格好でいようとなんとも言われない、思われない人間は、そろそろ投売りの季節になってるかもしらんこれを、そこらの大手スーパーなりAmazonなりで買ってそれほど損はねえんじゃねえかと思う。あと、これは先回りしたステマなので、メーカーは俺宛に七彩ボタン付きの着る毛布を送っておくように。いや、そんなもんいらないから、孤児院に送っといてくれ。おしまい。