何かいいことがあったわけでも、ボーナスがあったわけでもないのだけれども、革のコートを買った。右側の茶色いやつだ。左側のは二年前に買ったabxのメイド・イン・パキスタンの羊革コートで、右側は今年買った買ったabxのメイド・イン・パキスタンの羊革コートだ。古着だった。
楽天で、なんとなく見つけてしまったのだ。あれ、これ俺の持ってるのと同じメーカーじゃん、と思った。価格は8,000円だった。中古状態五段階で、下から二番目くらいのダメージ度、とあった。ポケット横に傷がある、袖のところに傷がある、全体的に柔らかいなど。でも、お前、俺の青いやつなんて、パキスタン人があちこち傷だらけにした加工だぜ。それに、柔らかいってのは手入れされてるとか、そういうことじゃないの? サイズは? 2って書いてある。俺のも2じゃん。しかし、8,000円か。革のコートにしちゃ安い。これが悪くないのは類推できる。ああ、でも、俺が今必要なのは、雨か雪の日に着るための、実用的なダウンジャケットじゃねえの?
……などといったんは閉じたのだけれど、なーんとなく気になって、思わず買ってしまった。決して俺にとって安くない。だいたい、ネット通販で古着買うのってどうなの? こんなの、洗濯できねえよ? 汗臭いやつが持ち主だったらどうすんの? でも、これは結構タイトなはずだし、ええい、きっと女の子が着ていた、あるいはかわいい男の子が着ていた、そう信じよう、そう思って買ってしまった。
それで届いて、開いて、問題なし。もうお気に入り。自分の持ってるのと、まさに兄弟のようなフォルム。ボタンの感じとか、まさに一緒。いや、たくさん服持ってるようなやつならともかく、俺みたいのがこんなジャンル被らせてどうすんの? と。最初は、こっちは古着だから、雨や雪の日に使おうかなどと思っていたけど、やっぱりもったいないわ。いや、革に水気を怖がりすぎてるか? 俺。一応クリームとか塗ったりしてるけど(そういう作業が面白いってのもあるわな)。
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ああ、しかし、革はいい。身になじむ。革のコート着て寒風に立ち向かうときの感じったらない。DIOの気分になって、「ジョースターの血のおかげだ 本当によくなじむッ!」とか言いたくなる。いや、これで二着目にすぎないのだけれど、これっきゃないと思う。人工皮革じゃだめだ。革じゃなきゃだめだ。高級ブランドの人工皮革より、安い天然を取りたい。ピッグスキンより羊や鹿がいい。俺の財布は鹿革だ。もちろん小銭ポケットは左側についている。探すのに苦労した。通販だ。しかし革、革って、何様だ。
で、俺はここに俺の矛盾を感じる。今までさんざん書いてきたように、俺はあと半歩向こうにいけばヴェジタリアンになる類の、動物愛護者、ミート・イズ・マーダー人間なのである。いや、昨日の昼食にしたって、ひょっとしたら説得力ないかもしれないが、ともかくそうなのである。
それなのに、貧乏なのに、人工皮革はいかんという。これはなんだろうか。よくわからない。変な思い込みかもしれない。しかし、革はいいと思う。よくなじむ。毛皮はしらない。だから、ファーはフェイクファーでいいと思う。ひどい。でも、この矛盾もまた人間と開きなおってみせる。開きなおってぶっ殺された羊の皮をかぶって今日も行く。
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abxにホームページがあった。中村獅童が出てきてのけぞった。俺は中村獅童になりたかったのか? まあいい、二着も持ってるから、今後俺の好きなファッションブランド(ブランド?)はabxということにしておこう。はっきり言って、なーんもわからん、見当もつかんのだけれど、このユニクロ人間には。