なんか丸め込まれちゃったみたいな『ヒアアフター』

 おれはあんまりこれからみる映画の情報を仕入れないでおくタイプというか、そもそも映画雑誌とかを買うのも年に一回くらいというか生涯で二回くらいなものだし、なんとなくネットで評判っぽいものを適当にレンタルするくらいのものであって、ひょっとしたら予備知識必要なほうがいいのかもしれないが、新鮮なおどろきってもんでしょうってことにしている。
 それで、クリント・イーストウッドの『ヒア アフター』……って、公式表記の「ヒア」と「アフター」の間が半角スペースというところが気持ち悪い。原題がひとつづきなのだから「ヒアアフター」でいいのだろうし、どうしても「アア」が「アアセイコー」みたいで嫌だというのならば「ヒア・アフター」にでもしておけばいいのに。
 それはともかく、予備知識無しで見始めた。と、言いたいところだが、例の東日本大震災の影響で云々と、来世みたいのがどうこういうくらいは知ってしまっていたのだけれども。でもあれだ、『チェンジリング』で学んだ教訓は、ちょっとは知っておいてよい、だったか。いや、『チェンジリング』の誤解は、ひょっとしたら『ヒアアフター』と混じってたのか、情報が?
 まあいいや。そんで、なんというのだろうね、なんかこれもようわからんというか、小学生の読書感想文みたいにあらすじを書くと、「それでなんなのさ」的な印象になっちゃうんだけど、それでもいい感じだとおもった。マット・デイモンとかなんかいいし、あのフランス人の女の人の、ああ、ああいう人がフランスのテレビ局でバリバリやってんのかって感じとか、それこそあの世みたいな山の上の女医師とか、それに子役もなにも、まあびしっとハマってて。
 そんで、イタリア料理教室シーンとか、ちょっとマジでボンゴレの作り方そのままやってくんねえかと思ったり、本人役のだれだか知らないが、ディッケンズの朗読聴いてたいとか、あと、イギリスの小学校の中ってあんなんなのかなとか、そういうところが徹底されてるんだよ。
 まあ、あと、避けて通れないのは冒頭の津波なんだけど、実際のあの映像を見た後でも、こういっちゃなんだけど、やっぱりリアルさがある。もちろん地形や気候もなにも違うが、スーっと来るところとか、巻き込まれた人が溺死というよりなにかにぶつかってという例が多かったとか、そういうところもわりとクリアって言い方はよくないかもしれないけど、現実と比べて倒れないくらいの強度はあるんじゃないかみたいな。そういうところが確実になんか、ともすればの世界を裏打ちしてるっていうか。
 そう、裏打ちされてんだけど、でも、「なにを?」ってのがよくわかんなくて。なんちゅうのか、そういうものを、すごいリアルに描いてみましたみたいなところなのか、なんなのか。それとも、監督自身の老いとか関係あんのかないのか。フランスの女の人が「みんな死ぬのに興味ねえのか」みてえに言うところとかあるけど、まあそういうような、大災害、地下鉄テロ、交通事故、いろいろ死ぬしな。
 そんで、なんというか、「ひょっとして霊能力的なものがほんとにあるの? ないの?」的なところで引っ張るわけでもなく、最後にズダダーっとまとめ上げて、まとまるところにまとまったようになって、それでよかったねえってみたいな。なんかこう、意表をついてまったくまとまらんで終わるんじゃないかという、ようわからんドキドキもあったりしたんだけども。そんで、あれでスッと終わるのはいいなと思ったが。そんなところで。
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